無限の死のアリス
詩一
Kapitel.1 アリスズュステーム
「アリスに選ばれました。リーエ様」
「そう」
落ち着き払った様子でリーエと呼ばれた少女は静かに笑んだ。
「そんな気はしていたのよ」
およそ少女らしからぬ悟りきった言動。対してロイは、今年10になったばかりの彼女よりも動揺をしているようだった。
——アリスズュステーム。
10年に一度、
前月の
穢れを集めたアリスを殺すことで、スィギリン王国の向こう十年の災厄が取り払われる。そのため、使命者のアリス殺しはとても誉高いことだった。
アリスが死なずに済むためには、三人の使命者を倒さなければいけない。しかし、穢れを集めただけの少女に、抗う術はない。
つまり、ただ殺されるのを待つだけの儀式なのだ。
「それではロイ。わたしがアリスに選ばれたと
ロイは努めて冷静に黙礼をして、扉の向こうへ出た。扉を閉めるとほぼ同時に、彼は節くれだった指を曲げ、手紙をクシャリと握り潰していた。
「どうして……」
たまらず漏れた言葉には、絶望と苛立ちが混在していた。
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