第131話 これでメインキャラで独り身は星置と綾だけに。……ん?
「……で、それ以降栗山さんはここに来てないと。あ、この生チョコレート美味しい」
旅行から帰って迎えた次の土曜日。大学はまだ夏休みだけど、高校はもう二学期なので、綾はまた毎週土曜日に来る生活を再開している。
もぐもぐとホワイトチョコを口に含みつつ、綾は僕に言う。
「一言いいですか?」
「いいよ」
「リア充爆発しろこのやろー」
「ひ、ひどくないそれ……。っていうかさっさとくっつけって言ったの綾だよね?」
理不尽だ。この子理不尽過ぎる。
「付き合わなくても付き合っても何か起きるって、ほんとよっくんと栗山さんは面白いですね」
「……その毒はずっと続くんだね」
「去年みたいにまた修羅場演じてもいいんですよ?」
突如真顔で告げるから残暑が厳しいというのに、僕は背筋が凍ってしまった。……あのときは命の危険を感じたからもうあんな思いはこりごりだ。
「謹んで遠慮させていただきます」
「まあ、私もやりたくはないんで。それにしても意外ですねー。あんなに好き好きオーラ出していたのに、いざ付き合うとなると大人しくなるって。もっといちゃつきが激しくなって見ているこっちが角砂糖吐き出したくなるようなことすると思ったんですけど」
「……もうそのキャラで統一していくんだね」
「んんー、さすが北海道のお土産と言えば。生チョコレートも欠かせませんね。よっくんは食べないんですか?」
頬に手を当て満足そうにチョコをパクパク食べ進める綾。
「……僕、甘いもの得意じゃないから」
「確かに。でも、チョコレートってこの味しか買ってないんですよね?」
「……正直、僕も僕で頭がいっぱいいっぱいで、自分用のお土産のこととかすっかり頭から抜け落ちてた」
「お疲れ様です」
はあ……まあ、いいや。また北海道行ったら食べたいもの買おう。
「それで、既読はつくんですか?」
「連絡は取れるよ。っていうかほぼいつも通り。ただ『今は卒論きっちり進めたいんだー』の一点張りでまったく僕の家に来ない」
本来四年生の夏ってそういうものだと思うから、それは別になんでもいいんだけど、タイミングがタイミング過ぎて。しかも、卒論は進んでいるって自称していたからなおのこと。
「照れてるんじゃないんですか? 今まで後輩の男友達の家に遊びに行っていたのが急に彼氏の家に遊びに行くってなって」
「そこで照れる常識があるなら、友達の段階でもう少し遠慮して欲しいけどね」
「うーん、でも栗山さんってどこかずれているっていうか、やっぱりアホの子みたいなところありますからね。もう単純に誰かと付き合うって事実にいっぱいいっぱいになって、よっくんと会うことができなくなってるんじゃないですか?」
「……家に行くこと自体に照れはないのね」
「さあ、どうなんでしょうね。それは本人に聞かないとわかりませんけど」
「はあ……。じゃあもう栗山さんが落ち着くのを待つしかないってことかな。あまり一緒に外出とかしないし」
「付き合う前からほぼ毎日お家デート繰り返してますもんね……その相手がお家に来ないってなると……破局?」
「……スピード破局にもほどがあると思うけど」
縁起悪いからやめて欲しいし……。
「でも、実際半年後には栗山さん大学卒業するんですよね? どうするんですか? その後は」
「……どうするんでしょうね」
「生活リズムも大きく変わるでしょうし、きっと今までみたいに頻繁に家に来るってこともできなくなると思いますよ? そこらへんのことはきちんとしておかないと、自然消滅とか普通にありますからね」
「やけに詳しいな綾」
「……友達の経験談です」
最近の高校生は進んでいるなあ。こちとら成人した大学生だぞ。
「どうしても会いたいならバイトのシフト聞きだすとかあそこのコンビニに張るとかすればいいんじゃないですか? さすがに週に一度もシフト入らないってことはよほどのことがないとしないでしょうし」
「……まあ、そうだね」
どうしても会いたいならって……。僕女々しくない……?
今なら流行りのラブソングとか聞けるかも。
「栗山さんのことですし、ちゃんと話せば拗れることはないと思いますけどね」
ちゃんと話せれば、だけどね……。
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