第101話 未成年も交えた飲み会は誤飲に気を付けよう。洒落にならん。

 とまあ僕のいじりネタを肴に飲み会が始まる前から空気は温まっていた。……おのれ綾、許すまじ……。

 盛り上がった時間はあっという間に過ぎるもので、すぐに時間の七時ちょっと前になった。

「それじゃあ、そろそろ時間だし行こうか」

 僕と古瀬さんは飲み会、島松と綾は帰宅する流れ。四人揃って僕の家を出て、とりあえず八王子駅へと。

「あっ。そういえば夏休みどうするかの話してない……」

「……いいんじゃない? また今度で」

 島松、なんかやけに僕のネタに対する食いつきがいいなとは思っていたけど、まさかこれが狙いか? だとしたら必死な奴だ。星置が女とオレンジジュースのために全力を尽くす人間なら、島松はゲームのためなら全力を尽くす奴か。

 僕の周りの男子、変な奴しかいなくないか?

「もう……仕方ないか……」

 肩を落とすようにため息をつく古瀬さん。この二人は多分ずっとこんな感じだろう。最初は大人しい古瀬さんと島松の引きこもり体質がマッチしていたけど、古瀬さんがいい意味で打ち解けてきたから、それがどう作用するか。

 まあ、僕は主体的には関わりません。

 夏とはいえもう七時手前。すっかり夜の帳が降り辺りは暗闇と街灯、建物の灯りに包まれている。通り過ぎる車のヘッドライトが固まって歩く僕らを照らしてはすぐに走り去っていき、また照らしていきの繰り返し。少しジメジメとした空気はやはり変わることなく、陽が沈んだ今も蒸し暑い。

 やがて人通りも駅前になり増えてきて、そうなると待ち合わせ場所に到着する。

「おっ、なんかすげー大所帯で来た」

「お疲れー上川―、古瀬―」

「あれ、なんか見たことない人が二人もいるけど」

「ああ、古瀬さんの彼氏と僕の友達、ちょっと僕の家で駄弁っていてそのまま一緒に来た。二人はもう帰るよ」

「なるほど、彼が噂の古瀬の彼氏……」

 先に来ていたゼミ生三人とも合流し、残すは幹事の星置のみ。

 僕らはちょうど七時に到着したので、今ここにいないということは遅刻なんだけど……。

「幹事が遅刻って、前代未聞じゃん」

「言い出しっぺなのになー」

「上川―、何か聞いてない?」

 七時五分。星置の姿は見えない。あいつ……何やってるんだ? ちょっとやることあるとは言っていたけど、そんなに長引くようなことなのか?

「いや……遅れるとかそういう話は聞いてない……何かあったのかな」

 僕はとりあえず現在進行形でやらかしている星置に電話をかけてみる。

「……だめだ、繋がらない」

「まあ星置だしなー、どうせ道歩いていたら可愛い女の子見つけて声かけたとかそんなんじゃない? 俺、前もってあいつから店の場所は聞いてるから、先行こうぜ? なんだったらそこの二人も来る? もしかしたら星置の分キャンセルとかになると面倒だし、そこらへん融通効くかもよ?」

 ゼミ生の一人がそう言う。

 ……島松はいいけど、綾はなあ……がっつり未成年だからなあ……。さすがに女子高生を飲み会に同席させるわけにはいかないでしょ……。

「あ、それだけど、彼女高校生だからさすがに……」

 僕が提案した彼にやんわりと断りを入れようとすると、

「はあ? 高校生? まじで言ってんの? 上川、お前高校生の知り合いがいるのか?」

 ……どいつもこいつも。そんなに女子高生の知り合いがいたらだめですか。

「……知り合いっていうか、幼馴染」

 あまり言いたくはないけど、隠すとややこしいことになりそうだからあっさり白状する。すると、店に向かおうとした男子は急に僕のもとに来ては両肩を掴む。

「そこらへんの話、詳しく聞きたいから彼女も参加で。大丈夫、高校生に飲ませるほど俺は腐っていない。いいよね?」

「えっ? あっ、は、はい、私は全然……」

「お、おい綾、さすがにそれはまずいって……飲み会に参加させたなんて綾の父さんにバレたら僕が締められるって。なんなら半殺しくらいまでならあり得る」

 何度も言うけど綾のお父さん綾のこと大好きだから。

「大丈夫ですって、どのしろ今日はよっくんの家で晩ご飯食べる気でいたんで、帰りは遅くなっても平気です。最悪よっくんの家に泊まるってことにすれば門限解除ですよ?」

「……何があってもアルコールは飲むなよ。っていうか僕が飲ません」

「わかってますって」

「よーしっ。とりあえず役立たずの幹事はポイ捨てして上川の知り合いのJKと古瀬さんの彼氏を混ぜて楽しくいこーぜ」

 ……前途多難だよ、これ。とにかく綾に酒は飲ませない。それに集中しないと……。

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