眩暈SIREN-ハルシオン

『静寂の中で 一人少しだけ

 泣かせてほしい

 静かに見下ろす 錆びた月

 沈む 隠れる様に 塞ぎ待つ夜を』


邦楽の出番です。


今回はどちらかといえば若手のバンド、眩暈SIRENを紹介してみようと思います。ジャンルとしては、エモやポストハードコアなど、どちらかといえば「やかましく若々しい」類いにあてはめられることの多いバンドです。

ただ、それだけなら私の琴線には触れなかったでしょう。

このバンドは、非常に独特な世界観を持っていて、しかもそれが徹底されています。

性別不詳(恐らく女性)とされ、顔を一切メディアに登場させることのないボーカルのどこか中性的でミステリアスな、そして圧倒的存在感を示す透明度と冷たささえ感じさせる歌声。そして、激しい曲調の裏で、また要所要所で、儚さをいかんなく発揮するピアノ。確かな技量を感じさせながらも、主張しすぎない演奏陣。若手とはいえど、なかなか通好みなバンドだと思います。

先述したバンドそのものの世界観や完成度の高さももちろんですが、何より、歌詞。少々若さを感じさせる、難解な言葉に頼りすぎたものもありますが、どの曲においても非常に歌詞の『重さ』が他の若手バンドからしても突出しているように思います。あえて若手バンドと括りましたが、恐れを言わずに言えば、邦楽バンドの中でも、と括ってもあながち過言ではないかもしれません。

正直どの曲も本当に素晴らしいので、選曲に迷いました。歌詞を抜き出せば、どの曲にも、味わい深さを感じることができます。その中から、私なりに『ハルシオン』という楽曲を今回は選んでみました。この曲は、眩暈SIRENの中ではかなり静かな曲調です。その面、先述した儚さや透明度、歌詞の重さがより強調されていて、もう私にとっては大好物どころか大好きすぎて涙物です。

どこの歌詞を引っ張り出そうかも散々悩みましたが、どこも全部素晴らしいので結局サビを抜き出すことにしました。曲調と歌詞のマッチングがとにかくすごい(語彙力がないですね)です。

最近はアニメとのタイアップなど、メディアへの露出も増えてきたバンドですが、その在り方は初期から変わることがありません。フルアルバムは一枚しか出しておらず、ミニアルバムが多数にあり、ちょっと音源を収集するのは面倒でもあります。しかし、追いかける価値は間違いなくあるバンドです。捨て曲は本当に一曲もありません。どのミニアルバムを手にとっても、一つとして捨て曲がないです。いやはや、この若さでなんでこんなに成熟してるのでしょう。どんな人生歩んでるんですかね…。


余談ですが、拙作『存在の咆哮』26章で取り上げた歌詞は、当バンドの『紫陽花』という楽曲からの引用になります。こちらもハルシオン同様、味わい深い歌詞と美しく儚い曲調を兼ね備えていますので、少しでも琴線に触れる部分があれば、ご一聴いただければと思います。

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