第5話 入学説明会
入試の合格発表があった次の日、合格者に向けた入学説明会が行われた。
今年の合格者は217人と、例年とさほど変わらない人数だったそう。再びやってきたロックリア魔法剣術学院は相変わらず壮大だった。
体育館で説明会を行うそうで、四百人の子供と親が一斉にその方向にぬかっていく様はなかなか面白かった。
体育館で何やら名前を呼ばれる順に座らせられるのだが、なぜかフェリルが一番最初に呼ばれた。
それから行われた説明では校則の説明だとか、入学するにあたって買い揃えておいてほしいものだとか、そういった事務的な話をされた。
あらかた説明が終わり、三十人単位でそれぞれ別の部屋に案内される。
「さて、君たちがこれから一年間一緒に学校生活を送っていくクラスメイトだ。よーく覚えておけよ。」
教室に入りさっき呼ばれた順に席に着くと、二十代後半くらいの男性教師が全員に言う。
「俺は君たちSクラスの担任を受け持つことになったダグラス=キーンソンだ。よろしくな。」
とても気さくな雰囲気な男性で、なかなかいい先生ではないだろうか?
「いまから顔合わせって感じで自己紹介をしてくれ。ローレンスから順にな。」
ふいに自己紹介を振られたフェリルは少したじたじになりながらもしっかりとした口調で自己紹介をする。
「初めまして。フェリル=ローレンスです。そこそこ魔法剣術には自信があります。あまり人付き合いは得意じゃないので仲良くしてもらえると嬉しいです。」
「はい、ありがとう。それじゃあ次はフォレスト、よろしく。」
すると横の席に座っている若緑色の髪をしているフェリルより少し身長の低い女の子が立って自己紹介を始める。
「皆さんこんにちは。ティア=フォレストです。ご存じの方もいるかと思いますが四大貴族であるフォレスト家の長女です。ここでは皆さんと同じ一年生なので、気軽に接してくださいね?」
彼女はとてもいい子のオーラを醸し出しつつあいさつを終えた。正直フェリルの自己紹介よりも数段、みんなの反応も良かった。
その後も自己紹介が続いていき、三十一人分が終わる。それを聞いていると、このクラスのほとんどがお偉いさんの家系のようだった。
とりあえずその日は顔合わせだけして、お開きになった。今日が二月二十一日、一か月後の四月四日に入学式が行われるそうだ。
家に帰ろうと校門をくぐったとき、ちょうどウォルターさんが通りかかった。
「おおフェリル君!合格おめでとう。」
「ウォルターさん、どうもありがとうございます。」
「それで、ちょっと話があるんだけどいいかな?」
「はい、かまいませんよ?」
そうしてフェリルはウォルターの後をついていく。ついていった先は理事長室で、ものすごく調度品がバランス良く配置してあり、落ち着きのある部屋になっていた。
フェリルとウォルターは対面式のソファーに座った。
「話というのはね、これからの学院生活で気を付けておいてほしいことだよ。」
「気を付けておいてほしいこと?」
「うん。というのも、今回君はうちの学院にぶっちぎりの首席で合格しているんだ。すべての教科で満点、実技なんかは採点不可能なほどハイレベルなものでね。」
一呼吸おいてまたゆっくりと話し始める。
「それで、気を付けてほしいことというのは、君もうすうすとは感ずいてるとは思うんだけど、この学校は貴族が多い。そして貴族はみんなものすごくプライドが高いんだ。だから得体のしれない君が主席を取ったことに難癖をつけてくるかもしれない。口だけならいいが、行動にまで移されればたまったもんじゃない。」
「それで、僕は何をすればいんですか?」
「それは私にもわからない。君が正しいと思うことをやってみればいい。私もしっかりとサポートさせてもらうからね。頑張ってくれよ。」
「まぁ、何とか頑張ります。わざわざありがとうございました。」
フェリルは挨拶をして理事長室を後にするのであった。
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