第4話 いざ入試へ!

 一か月がたち、フェリルの鬼の勉強も終わった。入試の前日になり、エリカが一人で迎えに来た。


「フェリル、ちゃんと勉強した?」


「もちろん!完璧だよ!」


「まあ、フェリルなら余裕で合格でしょうね。」


「任せてよ!」


「とりあえず、行きましょうか。」


 そしてフェリルは五年ぶりにログハウスから森の外に出る道を通った。その道は五年前と全く変わっておらず、ここに始めてやってきたときのことを思い出しながら歩いた。


 しばらく歩くと馬車が森の道を出たところに止めてあった。その馬車に乗り、ロックリア王国の王都にあるロックリア魔法剣術学院に向かう。


 王都までの道のりはかなり長く、ついつい自分で走っていきたいと思うフェリルである。


 結局王都についたのは次の日の朝、入試直前であった。


 試験会場であるロックリア魔法剣術学院はものすごく広かった。フェリルが山で生活していたころ近くにあった村の五倍はあり、どの建物も細かい装飾がしてあり、これが城だと言われても納得できてしまうくらいの豪華さだった。


 その広い敷地にある広場に今回の入試を受ける人たちが集合しており、ざっと数えただけでも二千人はいた。


 この二千人の中からこの学院に合格できるのはたったの二百人だということで、フェリルは珍しく緊張した。



 しばらくすると赤を基調とし、金の刺繍がさりげなくされたカッコいい服を着た筋骨隆々な男性が壇上に上がる。


「皆さんお集りのようなのでただいまから入学試験を執り行います。まず筆記試験から行いますのでそれぞれの担当教官の指示に従って移動してください。」


 フェリルは自分が並んでいた列の先頭に立っている教師の後に続いて引き試験会場である教室に向かう。


 教室の黒板には各教科の試験時間が書いてあった。順番は国語→算術→魔法史→兵法→古代語 の順だった。


 それぞれ60分のテストを終え、昼休憩に入った。


 ほかの人たちは次に行われる実技試験の練習をしていたが、フェリルは筆記でものすごく疲れたので昼寝をしていた。


 一時間の休憩も終わり、実技試験が始まった。実技試験は担当教官と五分間の模擬戦をするだけというシンプルなもので、ものすごくスムーズに進んでいった。


 しかしほかの人の試験を見ながらフェリルはドン引きしていた。


 というのも確かに彼ら(彼女ら)は流派の魔法剣術らしきものを使っているのだが、薄いのだ。剣に込められた魔力、発動した時の存在感、速度、威力。そのすべてがレイラさんに引き取られる前のフェリルにすら劣っていた。


 フェリルは彼らが普通だということを知らないため、ひどく混乱したが、実際、この世界の人類に残された魔力で五分間の戦闘を続けるためにはこれが限界なのだ。


 しばらくしてフェリルの番になる。すると教官も何か聞いていたのか、さっきまでとは別人のような、敵を見るような目でフェリルを見る。


「それではフェリル=ローレンス君、始め!」


「烈火流〝十字火〟」


 教官が今までの生徒にはしなかった魔法剣術を使う。フェリルに炎を纏った二本の斬撃が襲い掛かる。それに対しフェリルは、


「烈火流〝煉獄〟」


 同じく烈火流の奥義、神速の居合で斬撃を受け止める。しかし教官はすでに次の技を発動していた。


「烈火流〝陽炎〟」


 炎の斬撃を消し飛ばしたフェリルの背後に回り一撃を放ったが、フェリルにあたったと思われた瞬間、フェリルの姿が消えた。


「霊狼流〝嵐舞〟」


 突然教官の目の前に現れ、刃の嵐を浴びせた。霊狼流というのはフェリル自身が考えた技の流派であり、フェリルにしか使えないものが多い。今の〝嵐舞〟は雷の魔力で身体能力を大幅にあげ、刃に風を纏いカマイタチのようなものを発生させ滅多切りにするという暴虐の限りを尽くした技である。


 これを受けた教官は、何とか受け切ったが体中に傷がつき継続不能ということになった。


 これでフェリルの試験は終わり、帰りがけに入試結果を受信することができるという端末を渡された。


 入試も終わり、レイラさんのところに走って帰る。馬車で帰るよりも圧倒的に早く、三十分でついた。


「どうだった?」


「まあまあかな。多分受かったんじゃないかな。」


「よかったね。それじゃ一週間後まで安心して待てそうだ。」


 そして、一週間後、フェリルの持つ端末に合格通知と入学説明会の案内が届くのであった。

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