第3話 五年後のある日…
フェリルがレイラとエリカのもとにやってきて今日で五年がたった。レイラは去年から高等魔法剣術学校の一年生として寮に入ってしまった。
フェリルは親もおらず、誕生日もわからなかったため、レイラと出会った日、一月十四日を誕生日としている。
そして今日はあの日から五回目の一月十四日、つまり十五歳の誕生日である。フェリルはこの五年間で、色んなものを学んだ。
ほとんど山で生活していたため、一般教養などないに等しかったため一から常識やら言語やらを学び、その傍らレイラの雷鳴流を学んだ。
フェリルは魔物を食べていた影響か、本来ならごく少量の魔力、一つの属性しか持たないという常識を思いっきり無視し、膨大な魔力、基本属性から派生属性まで全属性を持つという特殊体質であった。
そのため三年で常識から魔法剣術の仕組み、一般教養、雷鳴流を完璧に学びきると、レイラのつてを使い、様々な流派の技を学んだ。
しかもフェリル自身、好奇心と探求心の塊だったため、知りたいもの、初めて見るものに対する吸収力がすさまじく、あらゆるものをすぐに覚えていった。
ついには二十の流派の技を身に着け、それを応用し自分の技を生み出してしまった。
そんなフェリルも今日で十五歳になる。すっかり身長も伸びて顔も優男といった感じのイケメンになった。
フェリルの誕生日を祝おうということで、今までフェリルと関わってきた流派の師範やその弟子たち、レイラの知り合いである商人などからたくさんプレゼントやら手紙などが届いている。
中には自分の流派の師範代にならないかといった勧誘のものもあったが、みんながフェリルの誕生日を祝ってくれた。
そんな中、エリカの手紙に同梱されていたいかにもお偉いさんからのものですよって感じの封筒があった。
その封筒の裏側には『案内状封入』と書いてあった。
レイラさんと二人でその内容を読んだ。その手紙にはこう書いてあった。
『拝啓 一陽来復の春、お変わりなくお過ごしのことと存じます。おかげさまで我が学院の生徒たちも大過なく元気に過ごしております。
さて、この度はフェリル様の十五歳の誕生日、誠におめでとうございます。フェリル様の素晴らしい活躍はわたくしもよく聞き及んでおります。
つきましては今回、フェリル様を我が学園にご招待したく、この手紙を上げさせていただきました。レイラ様とご相談いただき、検討いただきますようよろしくお願いいたします。
末筆となりましたが、厳冬のおりから、くれぐれもご自愛ください。
敬具
ウォルター=フォールズ』
「ウォルターから直々に招待状が届いたのか。フェリル、よかったな。」
「ウォルターさんって偉い人?」
「偉い人どころじゃないぞ。世界で最も大きく強い魔法剣士を輩出している超エリート校の理事長だよ。しかもこの人自身、ものすごく強い。」
「へー!そんな偉い人が僕に招待状を送ってきてくれたんだ。」
「せっかくだ。行ってみればいいんじゃないか?」
「でも、お金がかかるんでしょ。」
「まあ、それなりにはな。気にするな。私が出してやる。」
「でも…」
すると、ログハウスのドアがノックされた。ドアを開けてその人物を見るとそこに立っていたのはエリカだった。
その後ろには六十歳はいっているだろうが、ものすごくきれいな白髪を短く切りそろえ、背筋もしっかりとしているロマンスグレーな人がいた。
「フェリル、アタシの手紙もう見た?」
「うん。わざわざありがとう!それで後ろに立ってるおじさんは?」
するとその男性は一歩前に出てゆっくりと名乗る。
「初めましてフェリル君。私はロックリア魔法剣術学校理事長のウォルター=フォールズだ。」
「もしかしてあの招待状を送ってきてくれた人?」
「ああそうだよ。今日は君とレイラ君に相談があってきたんだ。」
そして四人はテーブルを囲うようにして座る。
「ウォルター、それで私とフェリルに相談って何だい?」
「二人とも私からの招待状は読んでくれたよね?実はそこに書き忘れていたことがあってな。私たちはフェリル君にうちの学院にぜひとも推薦入学してほしいんだ。」
「推薦入学?」
「うちの学院では今年から推薦入学という制度を始めてね。私ともう一人、校長が各地に出向いて才能ある子をうちの学院に招待しているんだ。入試ももちろん受けてもらうが合格すれば学費も入学金も寮費もすべてこちらが負担するという仕組みだ。」
「合格すれば三年間タダで勉強できるの?」
「もちろんだ。」
「レイラさん、僕ロックリアに行きたい!」
「私は構わないさ」
「それじゃこの用紙にいろいろ書いてくれるかな?」
ウォルターに渡された願書にフェリルとレイラはすらすらと必要事項を書き込む。
「それじゃあ、これで後の手続きは私がしておこう。入試の日だが…」
「理事長先生、あたしが前日に迎えに行きますから大丈夫です。」
「そうか、それじゃあ今日はお暇させてもらいましょうかね。」
「わざわざありがとうございました。」
「いやいや、気にしないでくれ。君がうちの学校に来てくれる日を待ってるよ。」
そういってウォルターとエリカは帰っていった。
「それじゃあ一か月、しっかり勉強しないとね。」
「うん!」
そうしてフェリルは一か月、学院に入学することを目標に鬼気迫る勢いで勉強をしていくのであった。
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