第11話 新たな影
ランスの搭乗機が、敵艦に向かって進むと小ウィンドウが開き隊長からの通信が届いた。
「新人くん、どこに行くのかい?勝手に進路を変更するんじゃないよ」
ヘルメットごしでは表情は見えないが、怒っているのはわかる。
「敵艦の情報を詳しく取得するため接近します」
隊長にありきたりの返事をしたのだが、ランスとしてはデータを共有した時点で隊長から命令があってもいいくらいだと思っていた。
「隊長は俺だからな、勝手に動くな。まったく、どういう訓練を受けてきたんだ」
ランスは、隊長の言葉に言い返さなかった。訓練と言っても、今日入隊したばかりだ。軍の規則も、慣例もわからない。
「一人の勝手な行動で、小隊全体が危険になることもあるんだ。軽率な行動は控えろ」
「わかりました。これからは、隊長の指示に従います」
「初めての偵察で興奮するのもわかるが……あっ……あれはなんだ?」
隊長の言葉で、敵艦の映像を確認してみる。敵の駆逐艦らしい艦影は、見えている。後ろに見える影は、なんだ?駆逐艦の数十倍はある。何かの影なのか?
惑星の影にも見える。
「艦影だ……軍艦なのか?それにしては巨大すぎる」
隊長は、続けて言葉を発した。映像を見ても巨大すぎるためか、全体の構造まで把握できない。
「隊長、どうしますか?偵察を継続しますか?」
ランスは、自然と隊長に指示を求めていた。やはり、新造艦の情報は正しかったのか。他の隊員の映像や音声も入ってきた。一様に驚いている。
「ガハト隊長だ。全員に通達する。敵の大型艦らしきものを確認した。これから、司令部にデータを送り、今後の作戦を検討する。それまでは、現在座標でそれぞれ待機」
随伴艦も少ないことを考えると、艤装前の試験運航というところだろうか。巨大な艦を作るということは、新しい空域に長期駐留し、新しい惑星系を征服する目的なのか?
そう考えると、大型の補給船なのか?または、艦船の空母のような、ドックのようなものだろうか?もし艤装していないのであれば、今が攻撃するチャンスなのかも知れない。
今は、司令部からの指示を待つしかない。その間にも、敵艦はさらに大きく見えてくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます