第10話 敵影見ゆ

 敵艦発見のアラーム音と共に、小ウィンドウに映し出されたのは、小型の駆逐艦クラスの艦影だった。この規模の艦であれば、スピードもあり小回りもでき遠い空域まで巡航しているのも珍しいことではない。


 アラーム音に驚いたが、駆逐艦クラスであれば特に報告するようなものではないだろう。

「AI。駆逐艦の映像データを共有」

 ランスは、念のためデータを共有し、位置や距離などを正確に測定することにした。戦闘機ほどの小さな物体であれば駆逐艦クラスの索敵能力では、見つかる距離ではないだろう。ただし、こちら側が光を発したりしなければ。


 駆逐艦であれば戦闘機小隊でも攻撃は可能だろう。この駆逐艦が、新造艦ということだろうか?新型の兵器を搭載した駆逐艦なのかも知れない。

「AI、発見した艦は、データにないか?」

「遠距離のため照合できるデータが不足しています。さらなるデータが必要です」

 AIといえども、遠すぎて判別はできないようだ。おおよその距離であったり、大きさくらいは画像で判断ができるが、それ以上のデータがないと目的の艦かどうかはわからないということだ。


「AI、どのくらいまで近づけば、もっと鮮明な画像が撮れるのか?」

「敵に発見される可能性が高くなる距離ギリギリまで近接すれば画像による照合ができます」

「よし、接近する」

 ランスは、初めての出撃で敵艦に遭遇したことで、すっかり自信を持っていた。もし、発見されたとしても、戦闘機の機動力であれば離脱することも可能だと考えていた。


「敵艦の索敵範囲ギリギリまで移動します」

 AIの返事の後に、ランスの搭乗機はゆっくりと敵の駆逐艦に向けて進みだした。これまでの駆逐艦の索敵範囲を超える性能を持つ性能向上艦である可能性もある。そうだとすれば、性能が向上したことを自ら体験することになるだろう。

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