第9話 静寂と罠

 隊長を先頭とした偵察小隊は、格納庫を出たあと敵の新造艦の目撃情報がある空域に向かっていた。飛行ルートは、AIが算出したルートに従って飛行している。飛行中は、自動運転のため操縦者は何もすることがない。


「AI、隊長との連絡はできるか?」

 ランスは、AIに聞いた。通常、作戦行動中の通信は厳しく制限されているはずだ。

「可能です。出力を抑えた通信で隊員間のコミュニケーションが可能です」

「隊長と繋げてくれ」

 しばらくすると、通信が確立したのか小ウィンドウが視界の隅に現れた。そこには、隊長の姿が表示されていた。

「なんだ、作戦行動中だぞ」

 隊長は、偵察行動中のためなのか、神経質になっているようだ。

「隊長、新造艦であれば極秘なはずですが、目撃されるような空域に現れるのでしょうか?」

「そこを調べるのが偵察なんだが……まあいい。目標としている空域は、お互いに使われていない空域だ。どちらからも離れているからな。偶然、目撃した商船がいたようだ。そこからの情報だ」

「その情報が偽情報で、罠という可能性はないでしょうか?」

 ランスは、新造艦が簡単に見つかったことに違和感を感じていた。

「罠という可能性も含めて、我が小隊が調査するんだ、切るぞ」

 そう言うと、隊長の表示されていたウィンドウが消えた。

「隊長機との通信が切れました」

 AIが知らせてきた。罠であった場合でも、偵察小隊規模であれば、逃げることも可能だ。


 目標空域とされる空域に近づいてきた。この空域では、今まで戦闘も起こったことがなく、通常の商業航路でもないため、滅多に艦船が通過することもない。新造艦の極秘試験航行には、ちょうどいい空域なのかもしれない。


「艦影発見。艦影発見。確認をお願いします」

 AIが突然、知らせてきた。やはり、新造艦がここに来ていたのか?小ウィンドウが開き、遠方の映像が表示された。

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