第5話 人工知能と戦闘機

 入隊式が終わると、そのまま全員が訓練センターまで移動することになった。そこで早速、訓練に移ることになっていた。隊員は、軍籍に入ると軍の宿舎に入り、24時間同じメンバーと過ごすことになっていた。入隊式が終わって家に戻ることは出来ないのは、家に帰ってから軍隊への入隊を拒む者も多いからなのか?


 入隊式が行われた建物から、歩いて少し進むと訓練センターの建物が見えてきた。訓練センターの入り口には、大きな金属の塊でありながら機能美としても美しく見える戦闘機が置かれていた。これが、自分達が今から操縦する戦闘機なんだと意識した。

 ランスも、戦闘機を見て改めて自分の感情を確認した。

「この戦闘機で、あいつらを全員倒してやる」

 今まで明るい表情だったランスであったが、戦闘機を見た瞬間に厳しい表情に変化した。それだけ戦闘機が人の心に変化をもたらす存在でもあった。


 戦闘機を間近に見た他の隊員達は、歓声を上げたり写真を撮ったりはしゃいでいた。この戦闘機は、「ティル・スター」と呼ばれている。この惑星エレトラーンが所属する自由惑星連合で開発された戦闘機だ。中央にある脱出装置も兼ねた操縦席を左右から挟む形で胴体があり、胴体からは気体がある惑星での航行が可能なように、更に翼を展開することが出来た。


 胴体部分には、レーザー光線兵器2基とミサイルポッドが4基装備されていた。胴体部分は、通常完全に操縦席をカバーすることが可能で、その場合の視界は内蔵したカメラによって、パイロットが装着したヘルメットバイザーへ映し出される。


 左右胴体部分にそれぞれ核エネルギーを利用したエンジンが搭載されていた。どちらかの胴体部分のダメージが修復不可能なレベルに達しても、損傷した胴体部分を破棄し戦闘が継続可能であった。


 宇宙空間のみで航行できる仕様にすることで単純化が可能であったが、惑星内でも運行可能な多目的型にすることで1機当たりの開発費を少なくする必要があった。自由惑星連合には、戦力も財力も不足していた。


 戦闘機には、AIが搭載され操縦や兵器、ナビゲーションなど多くの事を自動的に行うことができた。戦闘行為も自動で行うことが可能であったが、自由惑星連合の中では、禁止行為とされていた。最終的に判断するのは、人である必要があり、人が搭乗する構造となる。


 小型ドローン4機が搭載され偵察、攻撃補助などを行う。これも、人が操作するわけではなくAIを介して行うので、操縦者は命令を伝えるだけだ。現時点では、敵方の戦闘機に比べても遜色ない性能を有していた。


 戦闘機の性能だけで戦局を左右することはない。戦略兵器と呼ばれるものでも、大きく戦局を変えるほどの成果は難しい。いつの時代も、多くの人の意識や考え方、世の中の流れなどが戦局を左右する場合が多い。多くの人が自由を望めば手に入れることができるはずだ。いつの時代も。

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