第3話 選ばれし者とは?
移住に向けた計画は、進んでいた。移住する惑星まで進む超大型宇宙船の開発、移住者の選定、移住環境の構築方法など多くの計画が同時に進んでいた。
その中でも重要なのが、移住者の選定だった。移住と言っても、誰も行ったことがない惑星。さらに、行けるかどうかもわからない。無謀とも言える計画に、自ら進んで名乗り出る者などいなかった。
そこで、選ばれた者達は意外な場所に住む者達だった。
「出れるのか?本当に出れるのか?」
男は、大きな声で叫んでいた。男がいる場所は、薄暗く異臭が漂う刑務所の独居坊だった。
「ここから死ぬまで出れないと思っていたぜー!」
満面の笑みを浮かべる男と対照的に、それを伝えている濃紺のスーツに身を固めた事務官と思われる男の顔は、苦渋に満ちていた。
独居房の中の住人は、見るからに凶悪そうな面構えと、独居坊に長い時間いたとは思えない鍛えられた体が薄暗い中でも確認できた。
希望者がいなければ、いつの時代にも選択されるのは犯罪者や低所得者だ。社会的な弱者が選ばれるというのは、いつの時代でも「差別」「格差」がある証拠でもある。
地球の環境が問題になっていても、それよりも明日の生活がままならない人が増えていた。人口の増加で多くの働き手が簡単に雇用でき、AIの普及によって、さらに状況を悪化させていた。
これらの人達を使って遥か彼方の惑星に送り、ある意味実験でもあり希望でもある。
数年いや、数十年とかかると予想される宇宙の旅に耐えることができるのか?肉体は、冷凍技術によって冷凍されたまま運ばれる。惑星に近づいた時に自動的に目標の惑星へ送り出されることになっている。
この話は、当事者には説明されることもなく、移住者ともファーストフロンティアとも言われる実験体は、冷凍され記憶もないまま運ばれていく。運ばれた惑星が人が住める環境であるのか?または、住める環境へ変化することが出来るのか?それは、運でしかない。
そもそも、移住者に選ばれた段階で運があるとは言えないかも知れない。生きているだけで苦痛しかない現状よりは、冷凍され眠ったままのほうが苦痛がないだけ幸せなのかもしれない。
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