第3話
私は洗面台に立つ。ぱっつん前髪とおさげの黒髪、目が悪いから眼鏡をかけていて、一見優等生に見えるが、決してそんなことは無い。
残念ながら、大分素行は悪い。というのも、昔から武術を習っており、その武術を使って虐めてくるクラスメイトを蹴ったり、腹いせに不良を殴ったり、などをして停学になったりしてるから、だ。
別に善人を殴ってないからいいだろうという私の感覚は世間からみたら少しズレているらしく、父に何度か怒られたこともある。
「今年はまだ誰も殴ってないよ、お父さん。」
だれもいない洗面台でなんとなくそう呟いた。
そんな脳筋な私が今無事に高校まで通えているのはこの生まれてすぐにつけられたチップのおかげなのだと思う。私のチップには知識が詰められている。
授業で覚えたこと、人生で知ったことは基本チップに詰められている。
忘れてしまう知識は全てこのチップに詰め、覚えの悪さを補っているのだ。
こういう自分の無い部分をチップで補う人間は少なく無い。
ただ、チップには制御の機能がないので、制限ができないと誰かを傷つけたり、犯罪を犯すこともある。それに関しては対策用に警察や特殊部隊がいるわけだけども、やはりそこは人としての倫理観が大切なのかもしれない。
「光莉ー!電車間に合わなくなっちゃうよ!」
「はーい、」
わたしは身体を向き直して、声のする方に向かった。
神のミチシルベ 神崎夏琉鬼 @kanzak_natuno
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