第2話

AIに制限が付いたこと以外にもう1つ、昔とは変わったことがある。

それは、人間の電子化だ。いや、決して人間が人間でなくなる、と言う倫理的に危ない話ではない。

AIがまた暴走を起こした際にそれに少しでも対抗できるよう、人類は生まれた時に体にチップを入れられ、さらにそれと連携した小型操縦器を耳元に搭載するようになった。

チップの機能としては、まあちょっとした超能力的なものを備えているくらいで、いつ役に立つかも分からないのだけれど。その超能力ってのもカスタマイズが可能で自分の技量にあったものに出来る。

学校ではそれの訓練もしてくれるし…亡くなる前の父はすごい発明だって褒めてたけど、どうなんだか。

正しい使い方ができなければ学校や職場でペナルティが課せられるし、酷いときには警察に捕まるし、人によっては無い方がマシだと思う人もいるのかもしれない。

「光莉?不味かったら残していいからね?」

「残したら昼まで体力もたないから全部食べるわ、全部。」

「そ、そう、ならいいの。それで。」

ママは小型端末の画面越しに寂しそうな顔をする。

家庭型AIだけど、画面越しは一応人の姿をしていて、お父さんの面影がある。

「お、お昼は期待してるから!その…そんな顔しないでよ、ママ、」

そうだ、そんな顔をされては罪悪感がすごい。

ママは顔を上げて「うんっ、お昼はとっても美味しいものを用意したわ!」と言って嬉しそうに笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る