S3.1 ミステリ部、バレンタイン前夜 2月12日

――雪城市 雪城高校3F:ミステリ部部室――


緋奈「そういやさ、鈴倉さんと萩原くんって幼馴染なんだよね」


夏乃「そうですよ?まー秋斗君がこっちに越してきてからではあるんですけど」


緋奈「じゃあ結構長いのかな?――萩原くん勧誘したときに女の子連れてきたからしれーっと彼女でも作ってたのかと思ったよ」


夏乃「もう10年近くは一緒に居るのかなー。その間彼女がいたなんて私は知らないですけど」


緋奈「萩原くんヘタレな所あるもんね……。そういやさ、もうすぐバレンタインだけどやっぱり渡すの?」


夏乃「そうですねぇ。もう毎年のことなので……。今年はなにしよっかなー」


緋奈「なんかいいなー、そういうの楽しそう」


夏乃「いろいろ作ってみるのは楽しくていいですよ。先輩は誰かに渡すとかないんですか?」


緋奈「お菓子作りそんなに得意じゃないからなぁ。渡すのも生徒会でちょこちょこっと渡すだけだしね。いわゆる友チョコとか義理チョコとかそんな感じ」


夏乃「買おうと作ろうと大切なのは気持ちですよ!今年は部活という新たな集まりも増えましたがどうですか」


緋奈「気持ちって言われてもねー。世間の雰囲気を建前に自分で甘いもの食べるって方が大きいし……。――そうか部活で渡してもいいのか」


夏乃 「ふふ、渡すものが一人だけ違おうと私は何も言いませんよ」


緋奈「うーん、みんなに同じやつを渡すと思うけどなぁ……。こういうのって誰か一人だけ違うと、後から大変にならない?根も葉もない噂とかさ」


夏乃「さあ?私は秋斗君ぐらいにしか渡したことがないので。さすがに今年ミステリ部に居て、秋斗君にしか渡さないのもなーとは思ってますが」


緋奈「む……。後輩のくせになんか生意気な感じだ」


夏乃「いえいえそんな……。ただちょっと面白いものが見れるかなと思っただけで」


緋奈「面白いって何さ。先輩馬鹿だからわかんないよ。とりあえず全員分作るかぁ……。先生の分どうしよ」


夏乃「なんにせよ貰い慣れてなさそうな人たちばっかりなんで、やっぱり面白いものは見れそうですけどね。先生には簡単でもなんかあったほうがいいですよねぇ」


緋奈「あー面白いってそういう。そっとしておいてあげたい話題だけど……。まあ先生含めて同じものでいっか、どうせたくさん作るなら一緒にやっちゃったほうが手間掛からないし」


夏乃「私もなんか、考えておかないとなぁ。最悪買ってもいいんだけど……」


緋奈「気づいたら結構いい時間じゃない、そろそろ帰れなきゃ。後鈴倉さん、緋奈でいいよ。せっかくの同年代なんだし、仲良くね?」


夏乃「はーい、片方だけって話もないし私も夏乃でね、緋奈。――うーんこれ言葉まで崩れそうだけどいいんだろうか……」


緋奈「おっけー、夏乃。まあ言葉も多少崩れてもいいんじゃない?じゃあ、また明日。部活でね」


夏乃「緋奈がそういうなら問題ないよね!じゃあまた明日ー」


――雪城市 雪城市:商店街――


エクレア「ふ~寒い寒い……。こちらの冬は雪もないのに冷えますわね……。――今夜は何をいただこうかしら……。お肉もいいですわね……旬の魚介鍋も温まりそうですわ……きのこが安いですわね~山菜鍋もいいかしら」


鏡花「ふふふ、バレンタイン~♪バレンタイン~♪さて、今年はお父様にどんなのを作りましょうか……」


エクレア「あ~そういえばこの先にうどん屋さんがありましたわね……」


▶交差点を曲がろうとするエクレアと鏡花はお互いパン女子高生のようにぶつかってこけます。エクレアが身体で鏡花を抱き止めるようにして、衝撃を抑え込みました


鏡花「今年はチョコフォンデュにしましょうか……きゃっ!?」


エクレア「むぐっ!?」


鏡花「す、すみません……。大丈夫でし……あれ、エクレール先輩?」


エクレア「んもう……なんですの?――ってあなた先日の……。え~と、お名前は何と仰いましたっけ?」


鏡花「はい、中等部2-B、水月鏡花です」


エクレア「ええ!?その立派なバストで中等部!?」


鏡花「――む、胸はあまり関係ないかと思います……」


エクレア「あ……、つい。失礼しましたわ。お怪我ありませんこと?」


鏡花「あ、はい。大丈夫です。エクレール先輩もお買い物でしょうか?」


エクレア「ええ、ワタクシは今夜の夕食を。キョウカも?」


鏡花「はい。それと、バレンタインデー用のチョコとお菓子作りの材料を……」


エクレア「バレンタインデー?――ああ、日本は女性からショコラを渡すんでしたわね」


鏡花「日本ではそうですね。――お父様が言うには、『世話になっている人へのお礼』でも良いそうですので、部活の皆さんの分も作るつもりですが……」


エクレア「へぇ……、いろんな風習がありますわね……。しかし、道理で学校の女生徒が何やら浮足立っていたわけですわ」


鏡花「好きな人にあげたり、渡すと同時に告白したりもするそうですね」


エクレア「あら素敵!故郷では男性から愛される日でしたが、そうですわね。ここは郷に入っては郷に従え。ワタクシも何か贈ってみましょうか!」


エクレア「そうと決まれば、キョウカ!材料を買いに行きましょう!」


▶無理に鏡花の手を引いて歩きだしますね。抱き止めていたこともあり振り回すようです


鏡花「え、あ、はい!お手伝いします!」


――雪城市 雪城市:パティシエールENK――


エクレア「やはり、ショコラのお菓子がたくさんありますわねぇ」


鏡花「この時期になるとやっぱり多いですね……。いくつか研究用に買っていきたいところですが……」


エクレア「キョウカは何を作る予定ですの?」


鏡花「お父様がお酒好きなので、お酒入りのを、と考えてます。確か……、りしゃーる、とかいうお酒があったはずなのでそれを少し使わせていただこうかと」


エクレア「あら、お父様にプレゼントなさるのね。孝行娘ですわねぇ」


鏡花「――亡くなったお母様の分、お父様がずっと私の面倒を見てきてくれましたから」


エクレア「そうだったの……。ではとびきりおいしいのを作ってあげませんとね!――ワタクシは……、そうですわね。やはりワタクシをプレゼントする意味も含めこのエクレアにしようかしら!」

エクレア「え~と……。アキト……ノゾム……エイリオ……。ミステリ部の男の子は3人くらいだったかしら?」


鏡花「後は……、叶琉くんがいますね」


エクレア「カナル?う~ん……。記憶にありませんわね……。まだ出会ってなかったのかしら」


鏡花「歳は私の一つ下ですね。背は……このくらいの可愛い子ですよ」


▶鏡花は自分を抱くような感じで大きさをアピールしています。胸先程だとわかりますね


エクレア「中等部の1年生ね。じゃあ……、店員さん!このエクレアの……これとこれと、あとそれとそれをくださいな!」


店員「はいはいなー。すぐ包むからまってなー」


エクレア「んふふ……。これでワタクシがエクレア作りに失敗してもなんとかなりますわ!」


鏡花「ふふ、失敗しないのが一番いいんですけどね」


――雪城市 雪城市:フユズミスーパー――


エクレア 「さぁて、材料ですわ!材料ですわ!――あ、あと夕食の材料ですわ!」


鏡花 「エクレアを作るなら、薄力粉、バター、卵、チョコ、――後はお好みでキャラメルや抹茶のクリーム、カスタードクリームを入れても美味しいですね」


エクレア 「へぇ……。そんなに必要なんですのね?ではこれとこれと」


鏡花 「――――ちなみにエクレール先輩は普段お菓子作りとかは……?」


エクレア「ワタクシは食べる専門ですわ///」


鏡花「作る際はレシピに正確に作ることをオススメします…………」


エクレア「さて、ワタクシの材料は揃いましたわ!」


鏡花「私も似たようなものですね。お酒入りのチョコと、チョコケーキ、チョコクッキーあたりにしようと思っているので」


エクレア「そんなにたくさん作って明日までに間に合いますの?」


鏡花「一応、作り慣れてますからね」


エクレア「余ったらワタクシにも分けてくださいな///」


▶エクレアはピンクの瞳を一瞬光らせます


鏡花「ふふ、勿論ですよ。元々部活の方々全員分作るつもりでしたから」


エクレア「ありがとうございます!ああっ明日が楽しみですわー!」


鏡花「まあ万が一間に合いそうになかったら今家に来てる従姉妹にも手伝って貰いますから、よっぽどがない限り大丈夫ですよ。楽しみにしてくださいね」

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