S3.2 ミステリ部、バレンタイン当日 2月14日

――雪城市 雪城高校3F:ミステリ部部室――


鏡花「~~~♪~~♪~~♪」

エクレア「キョウカ、上機嫌ですわね。その様子では出来が良かったのですのね」


秋斗「こんにちはー。おっ先生いない」


鏡花「萩原先輩、こんにちは。――私も作ってたのですが……、ちょっと量が少なかったのでお父様とお父様のお友達に手伝って貰っちゃいました」

エクレア「アキト!――バレンタインデーの……、ショコラですわ!」


▶エクレアは自家製のエクレアを秋斗の口に捩り入れます


秋斗「グウェッ!?あ……、美味しい。――――いやありがたいんですけど普通に渡してもらえませんかね」


エクレア「最初にアキトに食べて欲しかったのですわ///」


▶エクレアのピンクの瞳が一瞬光ります


秋斗「いやだから渡し方!!まあでもありがとうございます。」


鏡花「萩原先輩、私からはチョコケーキです」


▶ケーキがお皿に乗っていますね。小さめですが飴細工などもしてあり、時間がかかったんだなとひと目でわかります


秋斗「おお、まじでか。もらえるとは思ってなかった。ありがとう」


緋奈「やっほー。ってもうやってますね、と言うかおじゃましちゃいけない奴だったか。萩原くん隅に置けないね。ではまた後ほど」


▶緋奈はくるっと回ってそのまま部室から出ます


秋斗「ヘイユーカムバック。別にそういうんじゃないから多分……。いやそれ俺が言うのもあれだな」


鏡花「柏木先輩も誰かにチョコを渡したりしたんでしょうか?」

エクレア「どういうのですの?」


緋奈 「ユーじゃだれかわかんないぞー。――私は生徒会と、あとクラスとかなんやかんやで交換一通り終えて来た帰りよ」


エクレア「そういえばノゾムは今日は見てませんわね?」

みい「何だか人がいっぱい居ますね……」


▶みいは隠れるように入ってきて、少し溜息をつきます。夏乃はそれと一緒にニヤニヤしながら入ってきてへーほーふーん……と聞き取れる声で独り言を喋ってますね


夏乃「遅れてみれば想像とさほど変わらない秋斗君ハーレム、さすがだね。望くんがいないとは思わなかったけど」


秋斗「ただでさえ女子率高いのにコレだとマジでハーレムだな」


緋奈「嬉しい?」


秋斗「――悪くはない」


エクレア 「あら、一夫多妻ですの」

鏡花「皆さんの分もあるのでチョコケーキをどうぞ」

緋奈「正直じゃないな-。というか水月さんチョコケーキってすごい……。頂きます!」

みい「1個いただきます」

夏乃「あ、そうそう秋斗君。なんかもう皆名前呼びでいいじゃーんって思ったんだけどついでだし秋斗君も呼び方替える?リクエストあれば聞くよ?」


秋斗「えー今更変えるってのもなんかなー。秋くんとか夏ちゃんとか呼んでみる……?」


夏乃「秋くんって呼びづらくない?うーん……、じゃああっくんね」


秋斗「おっとまじで呼び方変えるのか。えーそれだと俺はなっちゃんか?」


鏡花「――わ、私も呼び方を変えた方がいいでしょうか……?」

緋奈「あれだよ、水月さん。無理しなくっていいんだよ。――あの人達は幼馴染っていう特殊な関係なだけだから……」

鏡花「幼馴染……、なんですか?」

みい「幼馴染……。どれくらいの付き合いなんですか?」

緋奈「夏乃から聞いたよ?もう10年くらいなんだって」

鏡花 「――そういった特別な関係って……、なんというか、憧れますよね」


秋斗「なんか気恥ずかしいんだけど()――――この話はなかったことにしよう」


エクレア「あら勿体ない。可愛いじゃないですの……、あ っ く ん?」


秋斗「お、おう……。やっぱ恥ずかしいから無しで無し無し」


エクレア「なっちゃんはショコラを渡さないんですの?」


秋斗 「やーーめーーてーーくーーれーーーーーーーーー!俺が死ぬ……」

夏乃「残念だなぁー、楽しかったのに……。さて私からのチョコはっと……」


緋奈「っと甘ったるい空間にいると今日の目的を忘れちゃう。はい、水月さんハッピーバレンタイン、チョコケーキ美味しかったよ。買ったものでごめんね?」

鏡花「ありがとうございます!――実はこういう風にチョコの交換をするの、憧れだったんです」


▶緋奈は学生が買うにはちょっと高いチョコレートを鏡花に渡して交換をしています


みい「そういえば、何で皆さんチョコを渡してるんでしょう」

緋奈「――なんでだろうね。まあ気づいたらそういう習慣だったし。はい、野浦さんもどうぞ」


みい「どうも。ふむ……、私も何かもってくれば良かったですね」


鏡花「日本では親しい人や思いを寄せる人にチョコなどを渡す日だとお父様が言っていましたね」

緋奈「まあお返し用のホワイトデーとかが3月にもあるし、そこでいいんじゃない?はい、エクレールさんもどうぞ」


みい「ホワイトデーですか……、なるほど。調べておきます」


エクレア「ワタクシの分もありますの?ありがとうヒナ!」

エクレア「ワタクシの故郷では男性に特別に愛される日ですわ。こちらではショコラをプレゼントするとキョウカに教えていただきましたので、郷に入っては郷に従えですわ」


夏乃「はい秋斗君。今年も私頑張ったよ」

秋斗 「おう、毎年毎年ありがとうな」


▶夏乃は手製と思われる箱ごと秋斗に渡します


秋斗「ふふふしかーーーし!もうもらうだけの秋斗くんではないのだ!」

秋斗「まさか他にももらえると思ってなかったから夏乃の分しかないけど、それはそれ、ホワイトでーを乞うご期待ということで、俺からはこちらをどうぞ!」


▶秋斗は結構高そうなお店のロゴがあるシフォンケーキを夏乃に渡します


夏乃「えっ、ありがとう。いやー今返してもらえるとは思ってなかったようん。緋奈もありがとね」


緋奈「オーお熱いね、横からだけど夏乃にも、はい。夏乃と違ってみんなまとめて買ったやつだけどね」


秋斗「いやマジで夏乃以外からもらえると思ってなかったので、他の皆はごめんけどホワイトデーを期待しててくれ」


みい 「――仲が良いんですね」

鏡花「――――なんか、いいですね……。お互いに分かりあってる感じが……、その……ええっと……。――こ、恋人みたいで羨ましい……、ですね……?」

緋奈 「んで、これが萩原くんの……、あれ?たりな、い?」


秋斗「お、おうこの流れでそれが一番驚きだったわ……。――――コレじゃあまるで俺がとても期待していたみたいに見えてしまう……」


緋奈「あ、いや、あるにはあるんだけど、その。買ってきたやつがちょうど切れちゃってて……。また今度でいいなら同じの買ってくるんだけど……」


▶緋奈は手提げから恐る恐る小さい箱を取り出すも、すぐに後ろ手で隠します


秋斗「お、おお?それはもしかしてそれって手作りってやつでは?」

秋斗「いやまた今度でも……。最悪くれなくても大丈夫だけどさ」


緋奈「あっ、う、うん。そうだけど。ほ、ほら!私あんまりお菓子作りとかしてなかったから、見栄え悪くて……。これでもいいの?」

鏡花「柏木先輩、お菓子は心が一番大事だそうですよ」

エクレア「うう!」

鏡花「エクレール先輩……。どうにも納得できない出来であったのでしたら……、今度一緒に練習しましょうか?」

エクレア「キョウカ……ありがとう……。ぐすん」


秋斗「おおう?いやでもそれわざわざ用意してるし、他のやつに渡すやつじゃないん?いいの?」


緋奈 「ち、違うよ!もともと渡すつもり無かったやつだし……。じゃあ、どうぞ、萩原くんハッピーバレンタイン」


▶緋奈はかなり照れながら両手で秋斗に手渡しします


秋斗「おおう、じゃあ、いただきます……。――ありがとう」


夏乃「そうだよ私はバレンタインの日にこういうものが見たかったんだよ……。重ねてありがとうね緋奈」

緋奈 「し、しかたないじゃん!色んな人に渡してて数合わなかったんだし……。後ホント見栄えよくないから!ここじゃあけないでね!絶対だよ!」


梧桐「――先輩、今までずーっとそうやって来てるんなら相当ですよね~。あ、コーヒーに入れる砂糖とって」


▶梧桐は雑に指示すると、みいはテキパキと取ってきます


秋斗「うおっ梧桐いたのかお前」


梧桐「楽しそうだったんでー声かけずに見てましたー。自販機の飲み物、そこに置いとくんで」

鏡花 「梧桐先輩、お砂糖と私からバレンタインデーのチョコケーキです」


梧桐「あ、どうもー。――チョコもあ……、ありがとう」

エクレア 「ノゾム……」


▶エクレアは梧桐の後ろにこっそりと回り込み、エクレアを裏側から口に無理やりねじ込みます


梧桐 「ゴフェッ!?」

鏡花「――あー……、えっと……。エクレール先輩、その食べさせ方は危ないですよ?」


エクレア「いえ、キョウカ。エクレアは稲妻のように素早く食べるのが伝統ですわ!」


梧桐 「ンッ……ゲホッ、ハァ……。け、気配が無かった……。エクレア、かこれ……」


秋斗「やっぱそれ皆にやるのか……」


梧桐 「――形はどうあれ、一応貰った……、のかこれは?ありがとうございます……」

鏡花「――ふふふ、今日はこうして皆さんにチョコを渡せてよかったです!これからもよろしくお願いしますね……?」

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