本編

S1 ミステリ部、始動する 1月13日

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   I  魔術師

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――雪城市 雪城高校3F:ミステリ部部室――


青葉あおば「ふぅー……!やっと、やっと終わりましたよぉー!!!」

青葉「先輩の先生が、部の生徒全員連れて何処かに行ってしまってから早3ヶ月!!!部員全員持って行かれるとはまさか思ってもいませんでしたが……、それはそれ!今から連れてくればいいんですよ!!!流石私!!!」

青葉「ふっふっふ……!なんて私は天才なんでしょう……!!そうですよ無理やり勧誘すればいいんです!そうです!取り敢えず適当な生徒を連れ込むのよ!!私!!」

青葉「ということでー!最初にここに通りがかった人を無理やり部員にしてしまいましょう!!」


緋奈ひな「青葉先生……でしたっけ?こんなところで騒いでどうかされましたか?」


青葉「ふっへっへへへへへへへへへへへ……!最初の獲物がやってきましたよ……!!っと柏木さんでしたね。取り敢えずこの部屋へ」


緋奈「獲物って……まあいいか。今は仕事ないし……。――じゃあおじゃましまーす」


青葉「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!魔法陣展開!!」


▶明らかに明らかな怪しい魔法陣の上に乗ってしまった柏木緋奈かしわぎ ひなは、夜叉としての適性を強制的に引き上げられ、妖怪としての本質を露見させるもののようですね。緋奈の耳の位置が頭の上に変わり、狐耳が出てしまっていますね。


青葉「って……。あなた御狐様でしたか……。うーんこれは当たりだけどハズレだぁ……」


緋奈「――何者ですか、先生」


青葉「一昨日紅葉から派遣されてきたピッチピッチの21歳!!祓川青葉はらいかわ あおばですよー!!!――まあそれは置いておいて、柏木さん、今すぐ誰か連れてこないとこの写真を屋上からバラまくよ?」


▶いつの間にか持っていたポラロイドカメラから印刷した狐耳の緋奈の写真をピラピラとさせ、デコピンでピチピチと音を鳴らしていますね。


青葉「できれば正真正銘人間が嬉しいなあなんてなんて」


緋奈「こんな脅し方する人教育機関に居ちゃダメでしょ!――ソレはソレとして、その写真をばらまかれるわけには行かないので、適当に集めましょうか……」


青葉「頼んだわよ~」


――1時間後――


青葉「こんなもんでいいでしょ!!初手10人近く集めておいたら適当に使える人間を毎回5人6人招集すればいいもんね!!!流石私!!!」

青葉「まあ適当に連れてきたから、各々自己紹介してね☆☆☆私は依頼人連れてくるから!!」


緋奈「入っていて良かった生徒会。怪しまれることなく被害者を増やしてしまった……。罪悪感ってこんなにもクルものなのね……」


▶緋奈がしょんぼりしながら先導し、部室にぞろぞろと人が入ってきますね


エイリオ「なんやかんやで連れてこられたけどミステリ部だって!面白そうだよ!ナル!」

叶琉かなる「ミステリ部……、楽しそうですね。でも、依頼人……?」

秋斗あきと「あの、なんで俺連れてこられたの……」

夏乃なつの「こんな時期に半強制で入部なんて、噂に違わぬ変なところですねぇ」

莉乃りの「こ、ここがミステリ部……。面白そう……、だけど……?」

鏡花きょうか「――お父様が言っていた怪しい感じの集まりってここのことでしょうか……?」


みい「梧桐あおぎり先輩、こんにちは」

梧桐「――あんなにうるさい先生が顧問だったっけ。……誰?」

みい「覚えてないんですか……、まぁいいですけど。今日も寒いですね」

梧桐「ごめんねぇ、誰かを覚えるほど余裕ないんだ。覚えてられたくもないしさぁ~……、だから気にしないでいいよ。寒いのは同意するけどね」


エイリオ「他にも連れてこられた人がいっぱいいるみたい!あ!水月さん!」

鏡花「あら、エイリオさん。知ってる方がいて安心しました」


秋斗「というか柏木、俺達来年受験なり就職なりじゃね?今更新しい部活はいるの?」

緋奈「いやまあ……、いろいろあって。ソレに模試とかの点数なら今はあなたより高いから私は大丈夫よ」

秋斗「ウッ……。と言うかそれ分かってるなら尚更なんで俺連れてこられたんだ……。夏乃もごめんな、急に呼んだりして」


叶琉「ふーむ、知らない人ばかり……。ここは自己紹介したほうがいいですね。殆どの人は初めまして、僕は真崎叶琉しんざき かなるといいます。皆さんよろしくです」


緋奈「さて、この後も何かありそうですし真崎さんみたいに自己紹介していきましょうか。柏木緋奈です、なんか巻き込んじゃってごめんね」


エイリオ「水月さんの他はわかんないや!自己紹介しとこう!オレはナルの親友!エイリオです!みなさんよろしくぅ!」


鏡花「中等部2-B、水月鏡花みづき きょうかです。よろしくお願いします」


梧桐「はぁー……、だっる……。梧桐望あおぎり のぞむ、高等部1年。あんまり近寄らないでください。こっちからも不用意に近づかないんでぇ~、まそーゆーことで」


みい「――あ、自己紹介ですか。野浦のうらみいです」


莉乃「私は葉月莉乃はづき りのです。ぜひよろしくお願いします!」


秋斗「もうどうにでもなーれ。萩原秋斗はぎわら あきとです。よろしく」


夏乃「あっ、自己紹介ですね!鈴倉夏乃すずくら なつのです。校内にこんなに変わった人いたんですねって感じですでに楽しいです」


エイリオ「ナル!みて!みいって子すごく可愛い!ナル可愛いの好きでしょ!」

叶琉「ふわぁぁ……!本当です!あ、あの!みいさんお願いがあるのですが!」

みい「はい」

叶琉「え、えっと、失礼かもですが、頭を撫でさせてくれませんか?」

みい「――え?ええと、どうぞ」

叶琉「ありがとうございます!はぁ~……、安らぐぅ……」

エイリオ「え!?いいんだ!?オ……オレも!オレもいいかな!?」

みい「どうぞ……?」

エイリオ「わぁー……、太陽の香りがする……」

みい(くすぐったい……)

莉乃(私も今度撫でさせてもらおうかな……)


梧桐「あーあ……。ここ、もっとキワモノの集いってイメージだったのになぁ……。こんなに人いるんじゃあ、失敗だ」

莉乃「話に聞くと顧問の先生が一番の……って。……いました」


青葉「キワモノなんて私だけでいいんですよアオギリくん!!!キワモノ仲間になりたいんですか??」


梧桐「その方がー、関わりがうっすーく済んでいいじゃないですかぁ?」

秋斗 「自覚あるんですか」


青葉「当然じゃないですか!!!関わりを持たれにくいためにはキャラを濃くする!!!鉄則ですよ!!!」


緋奈「元凶の前で、ワチャワチャしてる中等部の子達が平和すぎて泣きそう……」


青葉「はいはーいそこ無視しなーい!!!水彩絵具どばっとした濃度を持った私がいるのに、無視しなーい!!!」


緋奈「混ざり混ざって黒くなっちゃったんですか。腹黒そうですもんね。それで、いきなり人集めて何するんですか」

梧桐「――あ~。そういうのもあるんですねぇー。じゃ、俺はこれから帰る幽霊部員って濃さで、それじゃ」


青葉「ということで!!じゃない!!!!!!これから部活あるんだよ帰るんじゃない!!」


▶梧桐の背中の襟をひっつかんでそのままチョークスリーパーして青葉は話し始めますね。話によると、依頼人が本当に来るらしいです


梧桐「そこの寄って集ってる集団だけで事足りると思いま~す……」

叶琉「――あっ危ない先生、どうしたんでしたっけ?」

夏乃 「見ていて飽きないのでこのままでもいいですよ」

緋奈「萩原くん、Go」

秋斗「えっどこに。何に」

緋奈「お茶菓子くらい用意してってことよ。ほらはやく」


青葉「ほら、入ってきて!」


秋斗「コレ以上誰か増えるんすか……」


▶すごく申し訳なさそうな感じで一人の男の子が入ってきました。明らかに異質な空気を感じて場違いさと、少しの後悔が入った顔をしていますね


朝日「ウッス……。俺、朝日悠莉あさひ ゆうりって言います……。謎を解決してくれるって聞いて、相談に来ました」


叶琉「依頼?ご用事?どうしたんです?」

莉乃「ミステリ部らしい活動が早速……、ですね」

秋斗「まじか。ちなみに俺は謎を解決するとは聞いてないんだけども」

エイリオ「謎だって!冒険のにおいがしてきたね!」

梧桐 「――君さぁ……、底抜けの馬鹿ぁ?ふつー信じないと思うなぁ、こんな人」


▶梧桐は青葉の方に指を指して、釈然としない顔をしていますね。青葉はわかりやすく足を踏み鳴らして不服を訴えています。裏でみいがお茶菓子を準備していますね


朝日「いや、どうしても困ってたのを他人に投げられるのなら責任軽くなっていいじゃないですか」


梧桐「おーおー、いい神経してるね~」

夏乃「なんであれここに呼び集められてる時点で人の事言えなんじゃないですか?」


朝日「……続けますね。俺、今日の朝、下駄箱に手紙が入ってたんですよ。昨日結構な雨降ってたじゃないですか。だからか知らないけど濡れてしまったみたいで、読めないんですよ。誰か解読してくれると嬉しいっす」


秋斗「おおう……。まさかの青春事情」

エイリオ「男子の下駄箱に入ってる手紙って言えば……、果たし状……!」

緋奈 「この学校でそんな古典的な、下駄箱に手紙って……校舎の裏に呼び出すくらい古典的!」

鏡花 「ドラマみたいなお話ですね」

梧桐「できないんで帰りまーす」

叶琉「どんとえすけーぷ顔の傷がひどい人」

エイリオ「そうだよ顔の傷がひどい人!そんな後ろ向きじゃなくてもっと前向きに取り組めばもっとなんでも楽しいよ!」


青葉「おーけーおーけー。アオギリくんの担任って……、竹岡だったね。あいつなら弱み握ってるし留年させるのも余裕だよ」


▶青葉はニタニタと笑いながら素早く入り口に回り込んで、梧桐に再びチョークスリーパーをかけます


梧桐「――そこの、人の傷に対して堂々と踏み込めるのは良い度胸してるね。配慮が無い人の話なんて聞く気はないんだけどさぁ……。はぁ、留年は困る」


朝日「それで、コレ……なんすよ」


▶朝日はすっと濡れた手紙の写真をスマホで見せてきます。中には

「1月14日の夕方 日日 …… で待ってます」と書かれてますね


鏡花「――読めませんね」

莉乃 「日日……、ですか」


朝日「明日までに何とかして場所わかんないと相手さんにも迷惑じゃないですか?じゃあ俺、連絡先置いておくので……。頼みます」


▶朝日は逃げるようにラインIDと電話番号を書いたメモを置いて出ていきました


秋斗「お、おう……。めっちゃ身勝手な話されてしまったな……」

緋奈「おっまじかー。完全に私らおまかせってかー」

夏乃「依頼って言われても、これ以上どうするんですか?手紙の記憶を読み取れるんだとかいうなら話は別ですけど」

莉乃「部員集めも雑だと思ったけど依頼も雑ね……」

鏡花「――どうしましょうか?」


青葉「足で稼ぐに決まってるだルルォ?わからないならわかるやつに聞く!それが基本ですぜ」


梧桐「そもそも部活動で留年ってなんだよ……。やってらんね」

エイリオ「いやいや!まずはもっと手紙を調べてみましょう!もしかしたら読める文字があるかもしれない……。かな?」

秋斗「ちなみに先生は仮にも顧問してるならなんかわかったりしないんですか」


青葉「私の教科は家庭科だから……。ほら……、その……、ね?」


夏乃「じゃあ一緒ですね。一緒に足で稼ぎましょう」

秋斗「コレ教科関係なくねえ?」

莉乃「炊事とか洗濯とか裁縫とかですか」

秋斗「うおおしかしまじか……。案外非日常的なことって日常に転がってるんだなあ」

莉乃「そうか、これが初仕事ですね!――皆さん改めてよろしくお願いします」

秋斗「よろしく」

みい「はい、よろしくお願いします」

叶琉「よろしくです。でもこれは取っ掛かりがないと困りますね……。地図とかでそれっぽい場所とかあるのでしょうか」


青葉「じゃあ私が顧問らしく仕切ってやろう!!!柏木ちゃん、水月ちゃん、真崎ちゃん。エイリオくんに野浦ちゃん、鈴倉ちゃん。葉月ちゃん萩原くんに梧桐くん。この3ペアに別れよっか」


みい「顧問らしいですね」

秋斗「顧問って言うより先生っぽい!凄いですね!ちゃんと先生だったんですね!」

梧桐「助かりますよーよく分からない先生。少なくとも~、あんな2人と一緒だけは嫌だったので」

莉乃「あ、顧問してる……。梧桐さん、萩原さん、お願いしますね……」

エイリオ「気にしてたのならごめん!えーっと梧桐さん?」

梧桐「気にしてないってさぁ……、どういう神経してたら思うんだろうね~?もう話しかけてこなければそれでいいよぉ。はいはい……。――はぁ、よろしく」

秋斗「はいよろしく。梧桐と葉月さん」


青葉「調べる対象は、朝日悠莉くんがどんな子か調べる担当。手紙をコピーしてもらってるから、それをその辺の奴に見せる担当。誰かが下駄箱に入れてるのを見てないか聞く担当に別れてね」


緋奈「これは高等部組が保護者役って感じかしら。――よろしくね、水月さん、真崎さん」

鏡花「柏木さん、真崎さん、よろしくお願いします」

叶琉「よろしくお願いします、水月さんと緋奈さん」

エイリオ「えーっとじゃあよろしくね!みいちゃん!鈴倉さん!どうしよっか!」

みい「エイリオさんと鈴倉さんですか。よろしくお願いします」

夏乃「それより……、朝日君がどんな人なのかってそれは事前に聞いておくことでは……?」


青葉「困ってる人を見れば取り敢えず声をかける!鉄則やぞ!!!」


夏乃「困りごとの内容と一緒にその人の事くらい聞いておいてください先生!!!」

緋奈「はい、先生。ペア単位で仕事が別れるって感じですか。」


青葉「そうです。取り敢えずは3つ決めたのでどれか決めてくださいね」


叶琉「あっ梧桐さーん!後でお詫びの品持っていきますねー!」

梧桐「そういえばー……、先輩だけはちょーっと覚えてるんですよねー。まだ気が楽……、か。――俺にお詫びなんてするぐらいなら、それを他の人と分け合った方が楽しいと思うよ~?」

叶琉「あなたにお詫びするから意味があるんですー!それでは後でー!」


▶緋奈、鏡花、叶琉のチームが出ていき、同じくらいのタイミングで夏乃、エイリオ、みいのチームも出ていきました。秋斗、梧桐、莉乃のチームは手紙の写真やコピーをじっくり見ることにしたみたいです


梧桐「――嫌味が通じにくい相手って、どうやったら折れてくれるんですかねぇ、先輩?」

秋斗「知らん。もっとポジティブに生きてくれ」

梧桐 「はぁ……。まーいいや~」


叶琉「なんて言ったけど僕達はどうするんです?」

緋奈 「そうね、手紙の調査は萩原くんたちがやるみたいだし残り二つのどちらかね。どっちがやりたいとかある?」

鏡花「――依頼人について調べるのはどうでしょうか?」

緋奈「依頼人についてね。私はソレでいいと思うわ。真崎さんはどう?」

叶琉「僕もソレがいいです、気になります」


夏乃「じゃあ私たちは下駄箱まわりの聞き込み……、になるのかな?いこっか」

みい「はい」

エイリオ「はーい!」


――雪城市 雪城高校2F:廊下――


緋奈「調査といっても、そもそも二人はあの子と知り合いだったりする?」

鏡花「私は冬休み中に転校してきたので全く分からないですね……。すみません」

叶琉「僕は……、多分話をしたことがない気がします」

緋奈「まあ中学生だしそりゃそうか……」


▶廊下を歩いていると少し恰幅のいい先生とばったり会いました。先程、青葉に脅されることが確定している竹岡先生ですね


▶鏡花 ローカル知識

 成功

▶叶琉 世間話

 成功

▶緋奈 言いくるめ

 ファンブル[何もなし]

▶緋奈 質問

 成功


竹岡「ん……?朝日くんか。2年C組だぞ。――――いなくなったのにまたミステリ部が始まったのか……はぁ……」


▶竹岡は疲れたように溜息をついて歩いていきました


クラスメイト♀「あー悠莉くんね。そこそこかっこいいってクラスでも話題になってるよ。バレンタイン私もあげよっかなーって思ってる。ライバル多いから気をつけてね」


鏡花「人気者みたいですね……。私のお父様の方が格好良いですけど」

緋奈「ライバルかぁ……。高等部ならもしかして近くにいる人が差出人だったかも……?」


クラスメイト♀「柏木さんも狙ってるんだ。うーん……、ライバルっぽいライバルっていうと……。唯映、あ、わかんないよね。綾波唯映あやなみ ゆえちゃん、かなぁ……。あの子悠莉くんずっと見てるし」


緋奈「いや、私は渡さないよ……。――うん、こんなこと聞いてると嘘にしか聞こえないだろうけど……答えてくれてありがとうね」

叶琉「今はその綾波さんという人はいるんでしょうか?」


クラスメイト♀「さぁ……?私仲いいわけじゃないし」


叶琉「ふむ、そうでしたか……。ありがとうございます」


▶聞き込みを続けていると、噂話を感じたのか違う女子生徒が話に割り込んでくるよ


クラスメイト♀(1)「私だったら馴染み深いとこにするかなー。テニスコートでチョコ渡すとかトキメキあるー」


鏡花「――テニスコートって食べ物持ち込んでもいいんでしょうか?」


クラスメイト♀(1)「それは聞かなかったことで」


緋奈「馴染み深いかー。こういうのって教室とか、帰り道とかそういうのしか思いつかないから意外かなぁ」

鏡花「そうなると依頼人の部活関係の方でしょうか?」

叶琉「となると、悠莉さんの部活から知ったほうがいいですかね」

鏡花「身近な方なら何か知っているかも知れませんし……。依頼人の馴染みがある場所で渡す、というのもあると思います」

緋奈「なかなか難しいね。部活くらいなら誰かに聞けばわかるかな」


▶緋奈 仕事知識

 成功


クラスメイト♀(1)「朝日くんなら吹奏楽だよ。サックスかっこいいんだ~」


緋奈「あーあの子吹奏楽部だったのね。それならライバル多いのも納得だわ……」

鏡花「吹奏楽部……。日・日………音楽室……?」

叶琉「音の下と楽の上に日のパーツ……、なるほど!」

緋奈「あっ!なんかそれっぽい!夕方だから休日練習の終わった後って感じかな?」


――雪城市 雪城高校1F:下駄箱――


エイリオ「下駄箱の臭いって独特だよね!履く前にちょっと上履き嗅いだりしちゃったり!雨の日だとスゴイよね!」

夏乃「見つけたのが朝九時って言ってたもんね。今朝か……。昨日の夜ってこともあるのかな」

エイリオ「今日の朝って言ってた気がしますよ!」

みい「とりあえず、何か他にも無いか探してみましょうか」

エイリオ「えっと、朝日さんの下駄箱は……」


▶みい 偽装

 失敗

▶夏乃 捜査

 失敗

▶エイリオ 視線

 失敗

▶取敢えずその辺の生徒を捕まえて聞き込みをしたけど、朝日の下駄箱すらわかりませんでした


生徒「いやすまん。他人の下駄箱とか見ねえし。わりい」


夏乃「まあそうですよねー。ありがとうございました」

エイリオ「そりゃそうだよねー、好きな人のならついつい見ちゃうだろうけどさ!」

みい「見つけられなさそうですね……」

エイリオ 「ぅーん言いたいことがあるなら直接呼び出して言えばいいからなぁ……!手紙なんてめんどくさいことする奴のやることはわかんないなぁ……」

夏乃「あら、遠回しに伝えるのもまた美しいものじゃない。もちろんちゃんと伝わるように対策しろとは思うけどね」

エイリオ「確かにね!漫画とかだとそういう展開はイイよね!」


▶夏乃 心理学

 成功

▶下駄箱に手紙なんて入れるような子は奥手で、好きでたまらないんだろうなと思った


みい「そういえば、先輩方ってどこのクラスなんですか?」


――雪城市 雪城高校3F:廊下――


秋斗「さて」


▶他のチームがみんな出ていった後に改めて手紙を見直すよ。クローバーがあしらわれた淡い緑の紙ですね。女の子が使いそうだなって見てすぐにわかります


秋斗「ノープランで手紙受け取っちゃったけどどうしようか」

莉乃「見た目はとてもかわいらしいんですけどね」

梧桐「――解読するしかない……、んじゃないですかぁ?それが読めるなら、ですけど~」

秋斗「見るべきは目的じゃなくて手段だから……」

梧桐「――それにしても……、こんな目立つ手紙よく持ってられますよね~。いっそ校内で堂々と持って回りますかぁ先輩?」

秋斗「いやもしマジモンのラブレターとかだったらいかんでしょ……」

莉乃「――私が送った人ならそれは本当に嫌ですね……」


▶秋斗 捜査

 クリティカル

▶秋斗と同じクラスにいる女子が「やほ」と声をかけてきて、すぐに手紙に目を落とします


クラスメイト♀(2)「あーこれ綾波の手紙じゃん。どっかに落ちてたん?」


秋斗「まあそんな感じ。返した方が良いよね」


クラスメイト♀(2)「なるほどねえ……。――彼女いないからってラブレター奪うのはダメだぞー萩原ー」


秋斗「いや待ってくれなんでそうなるんだ。まあもう言っちゃうけど悠莉から読めなくなったけど、気になるから場所の特定だけでもって頼まれたのよな」


クラスメイト♀(2)「ほーん……。ま、そこのコとか含めてロリコンオーラ増えてるじゃん萩原。中学生は犯罪だよ犯罪。――けど、これ本当に綾波のやつだよ。音楽室で告るんだってさ。吹奏楽部で聞いたよ」


秋斗「いやほんとマジで勘弁して……。ほーん。そうなんだ。わかったありがとう」


クラスメイト♀(2)「夏乃ちゃん泣かせるなよー。じゃね」


秋斗「初っ端ビンゴじゃんやったぜ」

莉乃「分かったんですね!さすがです……!」

秋斗「よせやいてれるぜ」

梧桐「あ、終わったんなら戻りましょう。早く帰れそうですねー」

秋斗「じゃあ一旦戻ろうか」


――雪城市 雪城高校3F:ミステリ部部室――


青葉「はいはーい。もうすぐ5時だぜ皆の衆!!調査報告を聞かせてもラオウじゃないか!我が生涯に一片の悔い無しなんてね」


秋斗「は?」

緋奈「部活動初日がもうすぐ終わりますが、顧問のノリについていけそうにないです」

叶琉「緋奈さん!気張りましょう!一時の嵐です」

秋斗「ほっといて良いんじゃないかなこの人」

夏乃「本当に無理なら丁寧に丁寧にスルーすればいいんですよ。一人空回る先生もきっと見ものですよ!」


エイリオ「下駄箱調査組!手紙はラブレターであると思いました!まる!」


秋斗「手紙調査組!ラブレターが確定しました!明日音楽室で綾波さんが彼に告るらしいです!」


鏡花「依頼人調査の結果ですが、依頼人は吹奏楽部だそうです。音楽室で告白というのも納得ですね」


梧桐「終わったみたいだし帰りま~す」

みい「解決したんですか?なら良かったです」


青葉「おーけーおーけー。割りとみんな有能なのね。じゃあ明日の14時集合!お菓子持って待ってるからね!!!」


秋斗「鑑賞会気分じゃないですかーヤダー」

莉乃「この人は遠足か何かと勘違いしているのでは……」

鏡花「流石に告白はそっとしてあげた方がいいのではないでしょうか……?」

緋奈「えっ普通に別の依頼があったりとか、特に用もないけど部室でダラダラとかそういうのですよね?流石に人の告白を見に行くだなんて畜生なことしないですよね?」

叶琉「依頼人の人にここじゃないでしょうかって伝えて、それで終わりじゃないでしょうか」

秋斗「と言うか今更だけどマジで部活やるの俺ら。急に集められただけなのに?」

梧桐「俺も解決したんならそれ以上関わるのはパスの方向でー」

みい「らしいですよ先生。」


青葉「なんやこいつら……いいよ!!!みなの内申には気をつけてくれたまえ!!ぷんぷん!!」


夏乃「そこで点数を持ち出すのは先生としてどうなんですか?」

秋斗「なんやこの教師……」

エイリオ「ちょっと何言ってるかわかんなかったや……!」

梧桐「今の録音した~?」

莉乃「ともかく……。依頼人にはしっかりこのことをお伝えした方が良いですね」

秋斗「そういえば最近の親は面談のときに持ってたり、子供に忍ばせてたりするらしいですね、ボイスレコーダー」


叶琉「……持ってくればよかったかな」

莉乃「この有様ならボイレコ必須かもしれないですね……」

鏡花「大丈夫なんでしょうか……」


梧桐「それよりさぁ~、誰が報告するの。これ」

秋斗「あーーー、じゃあ一応俺がしようか。学年一緒だし」

叶琉「明日午後2時に、ミステリ部っと……」


――1月14日 雪城市 雪城高校3F:ミステリ部部室――


青葉「はい!ということで数多の教師の弱みを握っている裏の暗躍者青葉ちゃんちゃんに逆らう不届き者はいるかなー???」


秋斗「で、結局来てしまったけれども」

夏乃「別に私まで連れてこなくたっていいじゃん秋斗くん」

秋斗「いやまあ俺はともかく夏乃の内申がこんなんで落ちても申し訳ないし……」

叶琉「お菓子何があるのっかな―」

鏡花「あの……、クッキー焼いてきたんですが……」

エイリオ「ナル!クッキー食べよ!」

叶琉「あっ!食べるー!」

秋斗「先生実は裏口入学ならぬ裏口就職してたりしません?訴えられて負けても知りませんよ?」

緋奈「行かないという選択肢が消え去ってたのが辛い。あっ甘いものあります?エリーゼとか食べたい」


▶みいが梧桐の首根っこを押さえて引きずってきたよ。借りてきた猫のように抵抗するのを諦めていますね


みい「梧桐先輩、着きましたよ」


梧桐「――君、力強いよねぇ」


エイリオ「……あの、梧桐さんもどうぞ?ポッキー、こんなですけど、昨日のお詫びも兼ねて。」

梧桐「……」


▶梧桐は無言でもしゃもしゃ食べていますね


秋斗「おうおうなんだかんだノリノリじゃんかよ皆」

叶琉「呼んでいないと気づいたけど来た!みいさんにもクッキーパスパス!」

みい「まぁ、私はどの道強制みたいなものなので」

梧桐「……」


青葉「ということで朝日くんには昨日連絡しておいたよ。――――さて、こっからが本番だ」


エイリオ「集団覗き見が本番ですか?」


青葉「ひょひゃひゅひゃははははひゃひゃひょひゃー!!!」 


▶青葉は奇声を上げながら部室全体に書いていた魔法陣を起動させます


叶琉「うわなんだろ……」

梧桐「……」

秋斗「なんて?」

莉乃「いきなり何っ……」

エイリオ「なんだ!?」

梧桐「――あ、この味好き」


▶ギラギラと青紫色に輝いた魔法陣が床に展開されていますね。昼間なのにまるで夜のように床が光り、部室の真ん中に青く妖しく光る空間の裂け目も開いています。強制的に妖怪としての本質も一緒に出てくるみたいですね


緋奈「……最悪だ。よりにもよってこんなところで」


▶緋奈はフードをかぶって耳を隠します


鏡花「――目の錯覚でしょうか」

秋斗「のんきかよ」

叶琉「んーこの抑えきれないマッドティーチャー感。えーっと、先生なにもの?」

莉乃「こわい」


青葉「もう君たちは因果から逃れられないのだ……!!この状況で誰もおねんねしないのは大当たり!!!!やっぱ同類は同類よね!私は妄想を武装して戦うケロちゃんみたいなナビゲーターなんやで!わかったなさくら!」


夏乃「んんーいつから夢の世界に飛び込んだのでしょう?これはなかなかの当たりですね」

秋斗 「いい歳して恥ずかしくないんですか」

梧桐「――武装」

莉乃「…………あぶないひと」


青葉「ほら、よく周りを見たまえ人間諸君。人間が人間じゃないような子が何人かいるだろう??」


エイリオ「……っ!」


▶エイリオは驚いた顔で尖った耳を抑えます


緋奈「……」


▶緋奈は制服を多少改造したフードをかぶっていますが、薄っすらと黒い耳が見えていますね。その後ろにみいが姿を隠しています。髪の色が黄色に変わっており、こちらにも黄色い猫耳が見えますね


鏡花「――これは……」


▶鏡花はぼんやりした顔で頭に生えた角を触ったり、羽根を触ってみたり、腕にある紋様を見たりしています。


秋斗「嫌だーーー見たくないーーーー。なんでこんなわけのわからん部活に入れられたんだ」

叶琉「――わぁ!みなさん、実はファンタジーな人たちだったんですね!」

秋斗「と思ったけどガチっぽい反応の方がちらほら……」

莉乃「――――え?……ほんと?」


エイリオ「――ナル、オレ……、今どうなってる?」


叶琉「ん?おぉ!耳が長い!あれ、エルフって感じの耳してる!」


エイリオ「――それだけ?」


叶琉「え?それだけだけど……。どうしたの?」


エイリオ「いや、人間じゃないんだよ?なんかその……、ずっと騙してたとかそんな……。――怒ってない?」


叶琉「色んな種族がいて、色んな特徴がある。みんな違ってみんないい、でしょ?」


エイリオ「――――そっか!そうだよね!流石ナルだ!ってうわ!ホントに色々いた!」


叶琉「気づくのおっそーい!」


梧桐「理解が追いつかない……。説明……」

鏡花「――隠しておいたはずなんですが……。何が起こってるんでしょうか?」


青葉「隠す……っていうよりかは本来の力を解き放ってあげてるだけだけどね。元々妖怪の子達は力が溢れて隠せなくなっちゃうのよ。適正なければ気絶する魔法陣だし、みんな適正あってよかったね」


莉乃「すごい」

鏡花「私はお父様の影響でしょうか」

夏乃「素晴らしい、素晴らしい世界ですね!非日常がすぐ目の前に……!え、ほんとに?」

梧桐「妖怪って……。――用かい?」

秋斗「のんきかよ」


緋奈「人の事を考えず土足で踏み込んでくるそのやり方、それも二度もだ。大嫌いだよ、先生」


青葉「褒めるな褒めるな。だって私に正しい導き方なんてわかるわけないし?やり方自由で人数さえ確保できればいいんだから」

梧桐(案外、隠しておきたいことを持った人って多いんだな……)


莉乃「――――この集団でどうしようって言うんですか」

夏乃「私も実は人間じゃなかったとかでもいいんですが……、変わりませんね?」

秋斗「いやあ俺はこの状況で夏乃までそういう風になったら泣くぞ」

夏乃「むしろ秋斗くんこそ……。幼馴染って片方だけ秘密を持ってたりしませんか??ほら、ほら……うーん?」

秋斗「ああ良いよねそういうの。俺も憧れるっちゃ憧れる。残念ながらお互い違うみたいだけど……」


青葉「ひょひゃひょひゅはふぁー!!私は大多数を助けるために少数の事情なんて無視するからね!!だって面倒だし!!!巻き込んでしまえば私の大勝利だし!!!――で、人間の諸君!!思い描く英雄の姿を脳に浮かべ給え。それがきっとキミの力になる!!」


叶琉 「まあそれはそれとして……、英雄の姿かぁ、どうしたものか」

鏡花「半分お父様と一緒というのは私にとっては嬉しいんですけど……」

秋斗「思い描く英雄像ねえ」


青葉「早く思い浮かばんか-い!魔力維持だってしんどいんだぞコノヤロー!」


みい「今日も寒いですね」

叶琉 「事前説明しなかった先生が悪いと思いまーす」


青葉「くそう白々しい……!」


梧桐「ん~……、英雄って、どういうのを指して英雄なんですかねぇー、先輩?」

秋斗「それって先生説明してからじゃあやってみんしゃいすればよかったんじゃないですかね。――ま、やっぱ自分でかっこいいって思えるものならなんでも良いんじゃないかね」


青葉「私は先輩方と違って知能があるわけじゃないですので。取り敢えず当たって玉砕して砕け散るがポリシー!!」


秋斗「砕け散っちゃ意味ないとおもいまーーす!!」

夏乃「何回砕けましたか??そのたびに学ばなかったんですか???」

梧桐「――かっこいいと、思えるもの」


青葉「学ぶ理由がないね!!!ということでとっとと思い浮かべてくれませんか……けっこうしんどい」


梧桐「おー、少し敬語はいりましたよ」

緋奈「騙した罰よ」

秋斗「学ばなくてもいいから成長してほしいですけどね!!!」


▶ぼんやりとみいはお茶を今更淹れて回るよ。エイリオにもみくちゃに撫で回されてますね


エイリオ「わーいありがとうみいちゃん!可愛さ倍増じゃないかぁ!うりうり~~!」

みい「……」


▶秋斗の周りからくるくると光が包み込み、気づけば薄く茶色の革製の鎧と腰に金属をあしらったレギンス、そこそこ立派な薙刀を持っていました


秋斗 「うっわ……。服が変わった……コレが極道必須技の早脱ぎかあ……」

叶琉「えーっと、強く、それにファンタジーさも組み合わせて……あーもうこれでいいや!くるりん!」


▶叶琉がくるっと回転すると光が急速に集まっていき、茶色がメインのクラシカルロリータの衣装になっていきます。タイツは履いていますが完全にスカートで、男らしさの欠片もありません。遠目で見たらメイドのように見えますね


叶琉「――なんか、なんかちがーう!ってうわ……、なんか足が、風通しが良くて……こう、スースーするというか」

莉乃「よーし、私はこれにする……!」


▶莉乃は祈るように手を合わせて目を瞑ると制服がシルクのワンピースのようになっていきます。シスターのような黒を基調とした服に、リボンのように小さいウィンプル、修道服にしては所々に見える薄いフリルの装飾がかかっています。ゴシック気味な傘のようなものも持っていますね


莉乃「え、傘……!?ちょっとイメージと違うけどこれはこれでいいかも……」

梧桐「――破を念じて、刃となす……刃……葉……。このお茶、熱い……」

秋斗「おーい雑念」

梧桐「……」


▶梧桐は革製のフード付きの茶色のインバネスコートと、革製のレギンス。ゴム以上に伸縮するベルトや小物をたくさん持ち、ウエストポーチや仕込み布などもあしらわれた戦闘服って感じの衣装に変わります


夏乃「そうですね、私は……。魔法の高みにいるような……魔界の神とか」


▶夏乃はグッとガッツポーズしてカーマインの白いフリル付きローブと自分より大きい杖、青色のストールをくるりと巻きつけています。杖を出したり消したり出来るようで、高速で出したり消したりしていますね


夏乃「赤いローブ!羽は!?羽は……つきませんか、そうですよね」

エイリオ「ナルますます可愛くなっちゃったな!似合ってるぞ!」

叶琉「性別的にその褒め言葉は困るー!」

緋奈「みんな、楽しそうね」

秋斗「なんていうかあれよな。各々のかっこよさと言うか英雄像っておもったより違って現れるんな」

梧桐「――ホントに変わるのか」

エイリオ「すごい!すごいよ!みんなどんどん変身していってる!ゲームの主人公みたいだ!」


▶青葉は魔法陣の上に発生している部室の真ん中に青く妖しく光る空間の裂け目を改めて指さします


青葉「よっしゃ準備出来たな!!――――これは恐らく綾波唯映の来てくれるかの不安、恐怖、断られるかもしれない怯え……。そういうのが具象化したものなの。こういう不安を放っておくとそもそも告白をするっていうことすら出来なくなって、逃げたくなって逃げたくなって本当に逃げちゃうの。ミステリ部の初めての仕事は、ちゃんと告白をするっていう事実をさせてあげること!わかった?」


夏乃「そういうことがわかってるなら先に言ってくださいせんせー」

鏡花「最初は何かと思いましたが……。こちらに来てからお父様から頂いた服はこの時の為の物だったみたいですね」


梧桐「よし、そこの2人。昨日の事、許してもいい。だから……、少し試し斬り、するね……」


エイリオ「え」

叶琉「マッテ!待って勘弁して!辻斬りナンデ!?」

叶琉「じーぜーんーせーつーめーいー!いやーじぬー!!」


▶梧桐は何処からか紫の大鎌を振りかぶります。が、青葉がすっと取り出した巨大なハサミで鎌ごと砕き斬ります。青葉の目の色と雰囲気がすっと変わり、見下すような目線を梧桐に向けるよ


青葉「そういうイライラは味方じゃなくて、魔物にやってよ。ね?」


莉乃「す、すごい……」

みい「危ないですから……」


▶みいは砕かれた破片をふわっと浮かせて元の形状に戻して、入るはずがないはずの自分の懐にしまいました。


梧桐「――なんとハサミ」

エイリオ「カットが入った……。ハサミだけに……」

鏡花「ぶふっ」

叶琉 「はぁ……、ふぅ……。た、タスカッタ?」

梧桐「これは参った。あれ……重い……」

エイリオ「で、魔物?」

梧桐 「ふぅ……。あれ、重い……」


青葉「今から心に巣食う負の感情の化身。それを打ち倒すんだよ。一方通行だからこれを置いてお祈りしてって」


▶いつの間にか元の雰囲気に戻っていた青葉はライトノベルを渡していきますね。少年と少女のひと夏の思い出を描いたセカイ系のSFです。


青葉「名作だからこんなアリアドネの糸の使い方じゃなくて、読んでもほしいけどね。こうやって置いて、自分は物語の登場人物ではなく現実に即しているものだってお祈りするわけ」


秋斗「一方通行だって最初に発見した人はいったいどれだけの犠牲を出したんだろうな」

梧桐「了解」

緋奈「そんな準備をするくらいなら、もっと別な方法で頼んでほしかったですけどね」

叶琉「設置?……えーっと、こう?」

鏡花「これでいいんでしょうか?」

莉乃「そう使うんですね……」

エイリオ「こうか」


▶各々ライトノベルに思いを馳せるよ


夏乃「へぇーイリヤの空ってこういう風に使えるんですか。なんでですか?」

秋斗「えっちょっと待って皆順応しすぎじゃねまって」


青葉「わからん!先生は凄い!!ってことで」


エイリオ「わからないことは考えないほうがいいですよ!」

秋斗「じゃあ先生宿題ってことで今度また教えて下さいね」

夏乃 「わからないのに讃えるわけないじゃないですか。不思議ですねぇ」


青葉「ぐぬぬぬうう……。いいもん先輩に聞きますもん!」


梧桐 「ここまで好感度がマイナス方向にカンストした先生、青葉先生ぐらいだし、尊敬してます。……よ」

叶琉 「向かう場所は音楽室……、でいいんですかね?」


青葉「何を言ってるんですか……!!!!ここまで来たんですよ……?この裂け目に飛び込むんです!!」


秋斗「先生俺君子危うきに近寄らずをポリシーにしてるんですよ。――先生に出会ってしまった時点で危機管理ガバガバだけど」

莉乃「――連れられてきた時点でこういうこともある気は一応なかったと言えば嘘になるんですが……」


緋奈「巻き込んでごめんなさい。……私は先に行きます」


夏乃「まあまあこんな夢みたいな現実楽しまなきゃ損だよ秋斗くん」

秋斗「お、おう待ってごめん7割冗談だから俺も行くって。と言うか引っ張られて行かざるを得ない!!!」

エイリオ「冒険って感じする!行こう!ナル!」

叶琉「えーこの中って……、あっちょっと!――んぇーい!」

莉乃「えーい……」

鏡花 「――これが運命ってことなんでしょうか、お父様……」


みい「皆入りましたかね?」


梧桐「――ああいうの、自分がホントに悪いと思ってる~って、感じるだけの自己満足だって嫌いだ。けど、まぁしょうがないなりゆき……、か~」


青葉「君たちも入るんだよ!!魔法陣だって私のパゥワー使ってるし、妖怪は妖怪としての力を最大限発揮できる場所なんだよ。ということで!入りなさいな」


▶青葉は梧桐をゲシゲシと蹴った後、みいの背中をグイグイと押し込もうとするよ


みい「――痛いです……。じゃあ行きましょう」

梧桐「む~ん」


――愛の中心で嘆きを叫ぶ――


▶中に入ると、空間が見てすぐわかる目が痛いくらいの愛とハートに満ちています。好きで好きで仕方ないと言ったファンシーな空間のド真ん中に、紫黒に染まった猛獣が唸り声を上げているのが見えるだろう。倒すべき敵が何か、君たちは即座にわかってしまいます


梧桐「――いやもう。絶句だよ」

秋斗「うっわあ……。予想外っちゃ予想外だけど予想できない範囲ではなさそうな不気味さだわ……」

みい「刺繍に使えそうですね」

叶琉「うわー愛が重そう」

鏡花「これは……、凄まじいですね」

エイリオ「愛は人を変えるって言うけど変わりすぎじゃないかな?」


???「そうだ!!ちゃんと力を解放して、あの猛獣を締め上げるんや!!」


秋斗「だれだこいつ」


▶いつの間にかケロちゃんのパチモノみたいなぬいぐるみがふわふわと浮いてますね。先までの特徴のある声と違い、いきなり青葉の声に切り替わります


ヒトヒラ「『あー誰とか言ったな-!!青葉ちゃんちゃん泣いちゃうな~折角使い魔出してサポートに来てあげたのになぁー』」


鏡花「どちら様でしょうか?」

叶琉「うわぁ喋るぬいぐるみだ!あなたはだぁれ?」

夏乃「本人が来るのが一番手っ取り早いと思いませんか?」

秋斗「うっわ冗談じゃなくてマジでケロちゃんじゃん」


ヒトヒラ「ヒトヒラやで!青葉様は面倒だからパースだって」


梧桐「あれに様か~。苦労してる……、ね~」

エイリオ「使い魔ね、なるほど。力を開放……」

莉乃「相当大変ですね……」


ヒトヒラ「せやろ?わかる?使い魔になった時点で人生詰みやでホンマ」


みい「かわいそうに」

秋斗「同情するぜ……」

叶琉 「いよいよもってファンタジー感出てきた。まあそれはそれとして」

緋奈 「ファンタジーみたいかもしれないけど、現実よ」

エイリオ「へぇ……。ここでなら森の中みたいに動けそうだ!あの頃みたいに、動きやすい恰好で……」


▶エイリオは自分でゲートを指で作り、具現化させてそこを通り抜けると白い胸当てとカーキの短パン。緑のサークレットとマントとブーツ。木製で少し小さめの弓を取り出します。髪の毛も若干伸び、背中程まであります


エイリオ「――懐かしい、久々に動き回れる!あの時は一人だったけど、今度は皆と一緒に!嬉しいな!」

緋奈「後一年、あのまま生きていけたはずだったけど……。こうなったら仕方ないよね」


▶緋奈はフードの帽子を勢いよく脱ぎ捨てるとフードが和スーツ系の生地に切り替わるよ。更に短い和ショールともっと短くなった制服のスカート、ニーソに、長巻を持っています


みい「この髪って染めてるって事になるんですかね……。校則違反ですか……?」


▶みいは赤いマフラーがふわっと巻き付いて、翡翠色のパッチをたくさんつけた毛布を取り出して盾のように前に展開しつつ、自らも縫い針と糸を持ってます


鏡花「マルチ・マジック・デバイス起動!試用者権限コードオン!」


▶鏡花は空中に図形を描いて飛び込むと、眼鏡が光って全身を包み、頭のおかしいようなハイレグかつ露出の多い鎧を着て、完全にTHE魔族といった風貌に変わります。RPGでも滅多に見ないほどのテンプレかつ禍々しそうな杖を持ち、目付きの悪さも相まって完全に悪役のようですね


エイリオ「ぉぉ!スゴイや!」

鏡花「似合いますか?お父様に『ヤバいと思ったら使いなさい。できれば男のいないところで』と言われていたんですが……」

エイリオ「全然似合ってるよ!カッコイイ!!!」


秋斗 「え、であれを倒せばいいの?」


梧桐「先輩ー、俺まで回さないでくださいねー」


秋斗「それ俺に責任来るの?」


梧桐「え~、なんか今にも動きそうだったんで?この状況で動くんですからー、それなりにあってもいいと思いま~す?」


秋斗「まあいいややってみよう。突っつけばいいんだよね」


▶秋斗 通常攻撃

 成功 20ダメージ


秋斗「よっしゃ!!おっおもったより扱えてるんじゃねこれ?いい感じじゃね俺?」


▶不意打ちで薙刀で突くと、魔獣は機嫌悪そうにこちらを見、戦闘態勢を取ります


秋斗「えっこれなんか余計なことしたやつ?」

緋奈「無闇矢鱈に殴る。萩原君そんな脳筋だったっけ? まあ今の私も人のこと言えないか。思いっきりぶん殴ってやりたい気分だわ」

秋斗「いやほらこう現実離れしてると浮かれるというか……。いやごめんもしかしなくてもやらかした説」


▶緋奈 通常攻撃

 成功 5ダメージ


▶エイリオ 通常攻撃

 失敗


▶夏乃 エンゲージ


緋奈「多分護身用でしかないから大した威力もないけど、おとなしく切り裂かれてね」

エイリオ「あの見た目だけど……、人の念だって言うから話は出来たかもしれないけど猛攻撃しちゃったもんね!」

エイリオ「久しぶり過ぎて外したー!カッコワリー!」

夏乃「何ができるんでしょうね、そうだなぁ……」

夏乃「君たちももっと仲良く仲良く。絆はきっと力になりますよ!」

叶琉「フレー、フレー、ミーンーナー」


▶魔獣は唸るような叫び声を上げて君たちに飛びかかるぞ!


▶魔獣 縦横無尽(3人に通常攻撃)

▶秋斗エイリオ緋奈 回避判定

 失敗

 失敗

 成功 11ダメージ


▶鏡花 精神集中


▶叶琉 時の刃

 10ダメージ


緋奈「そんな見え見えの攻撃、当たってやるもんか!」

秋斗「あっだ!!コレやっぱ突っついちゃまずかった系では!?!?」

エイリオ「んぁっ!っ~~~!!!」

鏡花「――生命力を、力に……『権限行使・生命変換』!」

叶琉「むっ、唐突にひらめいた!時を体に刻み込めー!」

エイリオ「おー!ナルかっこいー!」

叶琉「いぇーいさんきゅー!」

みい 「ちょっとチクっとしますね」


▶みい ヒール 秋斗

 6回復


みい「とりあえず処置しておきました」

秋斗「あでっ。あれ……おお、楽になった。ありがとう」

梧桐 「――あれだけ前に集まってたらさぁ、あの猛獣の後ろを取ることって可能なのかなぁ?えっと……、使い魔だっけ?」


ヒトヒラ「まあ出来るやろな。こそっと動くんやで」


梧桐「オッケ~」


▶梧桐 通常攻撃[足刀蹴り/小手打ち]

 成功 16ダメージ

 

梧桐「……うぅっ、らぁっ!!――おっも……」

秋斗「いやコレ引けんよな。後悔したって遅いもんな」


▶秋斗 通常攻撃

 成功 18ダメージ


秋斗「よいしょっ!!!なんかものすごく罪悪感が芽生えてきた……」

エイリオ「あいたた……今度こそ!」


▶エイリオ 通常攻撃

 成功 3ダメージ


エイリオ「せっ!効いて……!る?」

緋奈「これで終わりね」


▶緋奈 通常攻撃

 成功 6ダメージ


緋奈「護身用じゃなければ……。けど虫の息だし後はよろしくね」

鏡花「後少しですね……」

夏乃「ぎりぎりで倒さないようにとかそういうわけじゃないよねこれ……??」

梧桐「いやとっとと終わって欲しいんだけど~……」

夏乃「私にだって攻撃手段の一つや二つ……こんな感じで!」


▶夏乃 ソニックブーム

 8ダメージ

▶魔獣は空気の刃に貫かれてキラキラと光り輝いて消滅していったよ。空間のハートが更に赤くキラキラと光り輝いていき、躍動しそうなほどにまばゆく消滅していくよ。そのままいると一緒に消滅してしまいそうですね


鏡花「――チャージが無駄に終わりましたね……」

エイリオ「このままここに居たらヤバイ系じゃない!?」

緋奈「ずっと見てると目眩いがしそうだなぁ」


夏乃「綺麗ですね、人を想う気持ちって」

秋斗「いやあおじさんには眩しいねえ」


梧桐「――もしかして毎回これをやる……?」

鏡花「服を元に戻して……、っと」

叶琉「うわわっと、避難避難!」

莉乃「――びっくりしてたら終わってた……」

エイリオ「そんな日もあるさ!次はもう少しツイてますように!」


――雪城市 雪城高校3F:ミステリ部部室――


青葉「おーおーおー。若人さんたちが帰ってきましたぜ旦那ァ!――お疲れ様。怪我はない?」


エイリオ「引っかかれたぞー!」

秋斗「なんで先生は来なかったんですか」

緋奈「おかげさまで何人かは怪我してるわ」

梧桐「――つまり、こんな体の良い労働力として消費されていくってことかぁー」


青葉「私が行ったらこれくらいシャーンスパーンズバァで5秒で終わっちゃうからよ。経験が必要なのさ」


莉乃「本当なんですかねえ……」

みい「疲れましたね」

秋斗「それならそれで終わってそれではい解決じゃいかんのか……」

叶琉「のびぃ~~っと、ふー……。依頼人さんはどうなりました?」

鏡花「ふう……。慣れないことをしたせいかこの季節なのに汗かいちゃいましたよ……」


青葉「後任を作るためなんだからそれはね……、ということでお菓子食って解散よ解散。告白は今からみたいだから、出歯亀したい人は行けば良いんじゃないんかな!」


梧桐「先生が聞いて呆れる。巻き込んでおいてそれか……。単位、色付けるぐらいの根回しはしてくださいよ。先生」

叶琉「あっ梧桐さん、ちょっと!疲れたからだには甘いものといいますから、少しくらい食べて……、いきませんか?」



▶梧桐はふらふらしながら帰ろうとしますが、叶琉に呼びかけられて足を止めます


エイリオ「一度乗りかかった船だし、最後まで見届けてみる?」

夏乃「結果なんて後日知れるでしょ、わざわざ首突っ込まなくてもいいよ」

緋奈「どうせこの部屋で変身させたの、脅しの材料を取るためだったんでしょ。もうこうなったら一蓮托生よ」

秋斗「そうだ結局なんとなくの流れで変なことに巻き込まれてるけど、この部活って結局どんな部なんですかね」


青葉「この部活はここにいる人間の心の闇を人知れずこっそり解決する部活だよ」


エイリオ「お悩み相談所(物理)ってこと?」

鏡花「先生が一番闇が深そうな気がするんですが……」

秋斗「それ別に俺とか夏乃とかじゃなくて人間(?)組じゃダメなんですかね」


青葉「単位に色つけるどころか、ここで頑張れば就職先まで安泰だから!マジで!だから次も招集するんでよろしく!!」


秋斗「ろくな就職先じゃなさそう」

夏乃 「これで決まる就職ねぇ……」

鏡花「紅茶のパウンドケーキも焼いてきたんですが……、食べませんか?」

梧桐 「――食べ物に罪はないけど~、ここで今食べるのだけは遠慮する」

秋斗「いやさっきまで黙々と食べてたよな?」

叶琉「そう、ですか……。では、次の機会には一緒に食べましょう!」

鏡花「タッパーとラップも持ってきたのでクッキーとパウンドケーキ分けましょうか?」

梧桐「そりゃせんぱーい?あんなことさせられる前と後じゃ違いますよぉ?」

エイリオ「次がある事は確定したからね!ケーキー!」

叶琉「わーい、クッキーぷりーずぎぶみー!」

梧桐「――あぁ~もおー……。もう食べるからさっさとしてくれ」

秋斗 「結局食べるんかい!」

梧桐「食べ物に罪はないんですよ、先輩」

夏乃「なんか不器用な人ですよね、梧桐くん」

緋奈(ずっと、こうやって平和にいられればいいのになぁ……)


――



綾波「せ、先輩……!来てくれたんですね」


悠莉「あ、ああ……、綾波だったのか。部活で一緒なんだからすぐ言ってくれれば良かったのに」


綾波「い、いえ……そんな。私なんかが先輩に……」


悠莉「それで?俺に用って何?」


綾波「あ、あの……あのあの……せ、先輩、……す、好きです!!付き合ってください……!」


悠莉「えっああいや……んんっ。お、おう。俺なんかでよければ是非」


キャーキャー マジ???


悠莉「……ん?おい誰だ見てるやつは!!」

悠莉「ま、待て!」


綾波「えへへ……」



――

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