第8話 決意
合戦も勝利で終わり、兵士たちが宿舎の前で戦勝祝いの宴を行っている時、ガードリアスは一人、宿舎で悶々と過ごしていた。
戦場のあの悲惨な有様。人間はああも簡単に死んでしまう生き物なのか。何年も生きて積み上げてきたものが、突然ぷつっと断たれることの悲劇。イヤ、劇ということは生き残った者の驕りとしか言いようのない惨状。
あの姿は、もはや人間であって人間ではない。突如としてやってきた屍という名の別の生き物だ。生きてはいないが、自分の体を虫や鳥に捧げることでその務めを終える新しい存在のカタチ。
ガードリアスは、自分が生き残ったことの意味を考えてみた。意味なんてどこにもなかった。コースジャンが言ったように、たまたま今回ツキがあっただけ、なのかもしれない。
次の合戦でも通用するかどうかはわからない。
ガードリアスが転んだ時に後ろからつまずいて覆いかぶさってきた人。あの人がいなければ、自分は矢羽根の塊になっていただろう。何度もあの人の背中に矢が突き刺さっていた。だが、あの時、ガードリアスが考えていたのは、この人を犠牲にしてでも自分は生き残りたい、という思いだった。
だから、矢が貫通して自分にも刺さらないでくれ、と切に願った。だから、すでに息絶えていたあの人がずり落ちそうになったら、一番矢の雨を防げるような位置まで引っ張った。
モンペレの選択は正しい。彼はこの合戦に参加せず、除隊したことは賢いことに思えた。彼にはすでに戦場の悲惨さや自己嫌悪に陥ることを悟っていたのだろう。
自分はどうする?
外から歓声が聞こえてくる。
あの場に自分はいない。
それならもう腹は決まっている。
除隊しよう。
翌朝、ガードリアスは、コースジャンに除隊を申し入れた。
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