はい、これが導きアイテムです

「え……ちょっと待って……マジで」



事態が飲み込めないらしいイケメン剣士をよそに、美貌の魔術師は恭しく頭を垂れた。



「我々は今、魔物を生み出す山の頂へ向かうために旅をしておりますが、その山を神と崇める山の民に強硬に阻まれ先に進めずにいたのです。どうかお力を貸してはいただけませんか」


「うん、はいどうぞ。これ持ってって」



何の役に立つのかは知らないけれど、さっき作ったばっかりの混ぜこぜお酒を一升瓶でどどんと5本、カウンターの上に置いてみた。



「これは?」


「お酒。めっちゃ強いのばっかり混ぜてあるから、多分かなりキツいお酒だと思うよ?」



そして悪酔いしそうでもある。


それを聞いて、美貌の魔術師は「なるほど」と頷き、イケメン剣士は「へ? え、これどうすりゃいいの」と混乱している。でもそんなの、あたしにだってよく分からない。



「さあ? あたしには今あなた達の道を開くアイテムが見えるだけだから、何に使うのか、どう役にたつのかまでは知らないんだ。ごめんね」


「は? 何それ、マジでこんなヤツ信じて大丈夫か? だいたい神だの何だの言ってっけど、こいつ威厳ゼロじゃねえかよ」


「あはは、よく言われる」



率直に思った事を言ったらしいイケメン剣士の右頬を、美貌の魔術師の右ストレートが華麗に抉った。……と思ったらイケメン剣士が派手に後ろにひっくり返る。


なよやかそうな細腕ですが、魔術師さん意外と武術もいけるクチなんですね。


よっぽど痛かったのか右頬を押さえて転げ回っているイケメン剣士に絶対零度の視線を送ったと思ったら、美貌の魔術師はあたしの方へ向き直るなり同一人物とは思えない極上の笑みを浮かべた。



「ご厚情、感謝いたします」


「いいの、いいの。頑張ってね」


「何かお礼の品をお納めしたいところですが」


「いいんだよ別に。あたしも好きでやってる事だし」


「そこの阿呆を下男に置いていっても良いのですが、ご迷惑でしょうし」



……それって、そこで転がってるイケメン剣士でしょう? うん、そりゃ迷惑だわ。



「せめてもの気持ちにこれを」



カウンターに置かれたのは、美しい細工が施された小振りなブローチ。



「わ、すごい魔力。いいの?」


「何考えてんだ! お前の魔力を底上げするためのマジックアイテムじゃねーかよ! 世界にふたつとないってお前が……!」



思いっきり喚くイケメン剣士の口を白魚のような手で抑え込み、美貌の魔術師はもう一度目を細めて笑った。



「少しでもあなたのお役に立てば良いのですが」


「ありがとう!」


「魔の物を滅した暁には、またお逢いしたいものです」



一升瓶5本とイケメン剣士を引っさげて、美貌の魔術師は爽やかに去って行った。


いやはや。


ホストかお前は、と言いたいくらい愛想のいい人だったなあ。

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