第71話 転校生って、厄介だよね?
SIDE グラン=ロウド
最近、ハルが転校してきてからいろいろ変わったと感じる。おれは、教室くらいでしかしゃべらないけど、あの人嫌いを拗らせたようなメドですらハルのもとでは会話を試みようとしている。前は結構このクラスが心地よかったような気がするのに、最近は少し居心地が悪い。
ただでさえ厄介で特殊なクラスだ。それに魔力の粘土細工みたいな転校生が来れば、劇物になりかねない。
「……あーぁ」
頭の後ろに手を組んで、わざと大きなため息をつく。
「どうしたの?」
不意に声をかけられて、おれは心臓が飛び跳ねそうになる。そして笑みを繕って、声の主を見た。それはさっきまで思い浮かべていた人物――ハルだった。男にしては少し長い髪の毛を後ろでくくって、不思議そうな顔をしておれの顔を覗き込んでいる。
おれは必死に笑みを浮かべながら、
「え、あぁ、なんでもないよ~。ハルこそどうしたの?」
と言った。しかし、ハルには納得いかなかったようで、おれの顔を見たまま難しい顔をしていた。そして、数秒後に我に返ったのか不安そうな顔で”何でもないよ”、と言った。
「そうだ、次は魔法座学の授業らしいから急いでね」
ハルが気まずそうにそう言ったのでおれはとりあえず頷く。……サボろうと思ってたのになぁ。そう考えていると、ハルは背を向けて待ってるねと言って教室のほうへ駆けて行った。
おれはたいして真面目なわけでもないし、メドとかリリアンみたいな大志を抱いているわけでもない。ホント、うんざりする。そう思い校舎から踵を返そうとすると、誰かに腕を掴まれた。
それはいつもハルと一緒にいるジンという奴だった。
「ありゃ? いつのまにおれの背後にいたの?」
「……心配されてる、授業来る」
相変わらずツギハギした単語で会話する子だなぁ。おれはやんわりとジンの手を振りほどきながら、彼を見据えた。
「ここにきてまで授業に出ることはないよ。おれ、今日はサボるつもりだしね」
「……ふん」
ヘラりと笑って見せると、ジンは鼻息をついて呆れたような表情をした。おれの嫌いな表情だ。
ま、あんなに怒らなければあんなクラスにぶち込まれることはなかったんだけど。みんな、なんやかんや問題があるからあんなクラスにいるんだろうし。きっと、ハルもこいつのそうだ。嫉妬するくらいの力を持っているくせに。
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