第67話 シンプルなサンドウィッチと、鳥の鳴き声。
俺は、バードがわきから見ている中、サンドウィッチを作る。
きつね色のトーストしたパンに、ハムとレタスと、スライストマトを挟んだサンドウィッチだ。それから、ゆで卵と枝豆とマヨネーズをあえた、サンドウィッチ。あと、第一ダンジョンで採取した果物のジャムも準備する。それは気分で使えばいい。
「ねぇ~、まだ……」
じっとりとした目つきで俺の手元を見続けているバード。瞬きをしないものだから、目が乾かないのか心配だ。
俺は苦笑して、高級食パンの耳を見つめる。つい癖で切り落としてしまったけど、これはお菓子にしてしまえばいい。僕は結構な量のパンの耳を寄せて、鼻息を吐き出す。
「なに、おいしいの作るの……?」
ニタリと、バードが笑う。バードは結構な食いしん坊らしい。リリアン曰く、バードは気に入った味はとことん突き詰めるという。食するという意味で、だけど。俺は、そのバードの笑みに便乗して笑う。
「うん、三時のおやつになるんじゃないかな」
「ほんと……?」
もう垂涎直前のバードに苦笑する。彼も瞳は長い前髪からでも、キラキラ輝いていることがわかる。すると、共有スペースに人影が現れる。
珍しい組み合わせの二人だった。
「あっ。バードばっかり、ハルの料理食べるなんてずるーい!」
「……僕も、食べる」
それは今朝、仲がよさそうに見えなかったリリアンとジンだった。
リリアンはバードにとびかからんばかりの勢いでこちらに走ってくる。ジンはゆっくりと、俺のほうへ歩いてくる。
「……なに、作ってる」
ジィっと、見つめられる。
「サンドウィッチだよ。ちょうどお昼時だし、ジンもリリアンも一緒にどうかな?」
俺はそう提案する。作りすぎたと思う節もあったし、食材も本当にたくさん届いていたし。
すると、リリアンは嬉しそうに表情をパッと明るくさせた。
ジンも似たような感じだ。とはいえ、無表情に近い表情に変わりはないんだけど。
「やったー、じゃ、早く食べよう」
リリアンがテーブル用の布巾をもって、駆けていく。ウキウキしている様子がよく分かった。ジンはお皿を出してくれているし、バードに至っては椅子に着席している。気が早すぎる気がしなくもないものだ。
俺は陣が準備してくれたお皿にサンドウィッチを並べ、ジンに預ける。
「テーブルまで持っていってくれる?」
「うん、……わかった」
ジンはうなずいて、トテトテとテーブルに向っていく。
さて、お楽しみのおやつクッキングだ。
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