第64話 大したことじゃないけど、やっぱり気になること。

 SIDE バード=ラクリエ


 目が覚めると、まだ午前十一時でたいして眠れなかった。お腹一杯だったから、よく眠れると思ったのに。

 そう思いながら向かった先は、午前中には踏み入れない校舎。

 今日は実習の日だから、中にはのドームの前だ。じわじわと日光が不快だけど、たぶんそこにはあいつがいる。


「······ハル、だっけ?」


 透明なドームを覗き、その姿を探す。すると、先に紫のチビと目があった。どうでも良いけど、とにかく手を振ったらとっても不愉快そうに顔を歪められた。リリアンと組んでいるせいもあってか、疲労が伺える。

 

「あ」


 居た。


「メドに捕まったの? ······災難だねぇ」


 お互いに魔法を掛け合おうとしているのか、二人とも目をつむっている。そして、何かが弾ける音がした。いや、僕の目にははっきり見えていた。互いの魔力が弾けて、消えたのが。

 異常とでも言えようか。

 リヒト先生も、それに驚いたように目を見開いているのが見えた。


「······多分、メドより魔力が強い」


 メドはレベルも、魔力も僕たちに比べれば高い方だ。でも、明らかにハルの方が異常に見えた。

 それはドームないで目撃している、他のみんなも気づいただろう。でも、それは状況に対するイレギュラーとしか見えていないのだろう。ハルになんて、多分誰も疑いをかけていない。紫のチビはなんか気づいたみたいだけど。


「······はぁ、少なくとも後二時間しなきゃ帰ってこないんだよなぁ」


 プクゥっと、頬を膨らませて額をドームのガラスに引っ付ける。すると、偶然なのかハルと視線が合う。適当に手を振ってみると、首をかしげた後、手を振り返してくれた。必然的に、メドに見つかっちゃったけど。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 SIDE ハル


 メドくんが引っ張ってきたバードは、心底嫌そうに引きずられている。自分で歩くのすら面倒くさそうな顔をして、反抗せずに黙っている。なんか、渋々運動しなきゃいけない猫みたい。


「は~、メドぉもちょっと優しくしても良いじゃん」


「うるさい。なら、もうちょっと真面目になれ!」


 そんなやり取りが、繰り広げられている。俺は苦笑しながらそれを眺めているが、今は絶賛授業中だ。

 先生はなにも言わないが、視線が痛い。そんなこんなで、授業を乗りきるのはひどく億劫な感じがした。


 初めての授業って、こんなカオスになるものだっけ?

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