第62話 付与魔法と、無自覚の魔力?
授業が始まって一時間後。十五分ほどの休憩になった。
俺はふうっと、息を吐いて背伸びをした。他のメンバーも各々休憩に入っていて、和やかな雰囲気だ。
すると、ドームの隅っこにいた俺の前に影がさす。俺は俯けていた顔をあげる。そこには、意外な人物がいた。
「おい」
メドくんだ。不機嫌そうに目を細めて、体育座りで座っている俺を見下ろす。俺は少し驚き、ドームの壁に背中をぶつける。そして、おずおずと彼を見上げた。鋭い形の瞳と視線がかち合う。
すると、彼は余計に不機嫌そうな顔になった。
「······お前、魔素が見えるだろ。」
彼は極めて声を潜めて、俺にそう聞く。何でわかったのだろうと、首をかしげると彼は疲れたような顔をしてため息をついた。
「······はあぁ、お前そのことあまり話さない方がいいぞ」
「えーっと?」
なぜ忠告されたか解らず、俺は反対側に首をかしげた。
「······次の授業、俺と組め」
また首をかしげた。俺は今、彼に一生に授業のグループを組めと言われたのかな?
昨日、俺を邪魔といった彼が?
隕石でも降るのかな?
割りと失礼だと自覚しながら、俺はポカンとした顔をしていた。すると、メド君が早く答えを決めろと言わんばかりに、俺を睨み続ける。
「えーと、何で?」
「はあぁ。お前、自覚しないで魔法を使ってるだろ。ここの奴等は気付いて
ないっぽいが、お前の魔力は異常なんだよ。
それを悟られたら、面倒なことになるんだよ」
「つまり、今気づいたのはメド君だけだから、他の人たちが気づく前に
ってこと?」
そう聞くと、彼はあきれたように頷いた。
しかし、次の授業もさっきと同じ内容なのだから、組む人も変わらないんじゃないだろうか。そう思い、彼を見上げると彼は不機嫌そうな顔をした。ザックさん並みの顰めっ面だ。
「次の授業からはフリーだ。さっきのはお前のためのデモみたいなもんだから」
「······あぁ、そうなんだ。」
疑問が伝わっていたらしく、彼は聞くまでもなく答えてくれた。さっきのは俺のためのチュートリアルって訳なのか。なら、次からがいつも通りの授業になるんだ。
「で、早く決めろ」
メド君は俺を見下ろしたまま、そう聞く。もうすぐ、次の授業が始まるからだろう。俺は彼の要求にうなずき、分かったと言った。
すると、彼はやや安堵したような表情をした。
「じゃ。俺はいくから」
そう言って、俺に背中を向けて彼は歩いていった。同じドームないに居ることに変わりはないんだけど。
というか、彼が目の前にいたから立ち上がるタイミングを見失っていた。
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