第53話 1Sの男子寮は、通常進行してるらしいんですが······。

 どうやら今日は授業がなかったらしい。一時間ほどで寮へ向かうことになった。俺はグランに案内されるまま、校舎の渡り廊下を歩いている。もちろん、ジンも一緒である。不満そうなのが、ちょっと不安だけど。


「寮は1-BからEまで同じで、男女別れてるんだ。

 んで、AとSが男女別で1つのクラスで寮があるんだ。」


「へぇ、俺たちのクラスは他のクラスとは別なんだ?」


 グランの解説に相づちをうち、質問をするとグランはうなずいた。なぜかは聞かなくても良さそうだし、今後知る機会があるのだろう。そもそも、グランは元々人が減っていくクラスとも言っていた。そこに理由があるのだろう。


「まぁ、少数だから部屋は余ってるんだけどね。

 あ、掃除とか食事は当番制。こなすやつは居ないけど、仕方なんだよね」


 グランは苦笑を浮かべ、そう言った。掃除と食事は当番で回してくのか。まぁ、家事は好きだから良いんだけど。仕方ないって言うのは気になるものだ。


「こなすやつがいないって言うのは?」


「あぁ、男子寮で生徒で回してくから何も出来ないんだよ。

 料理とかもみんなで食べる習慣とか、もとからないし。それなりに

 いい家にいたからそういう経験もないしね」


 あぁ、なるほどね。俺は納得して、頷いた。確かに、メイドさんや執事さんがいるからわざわざやる必要もないんだろうな。それに、ブルーノさんは学園に通うのは小姓の子息から上の階級が多いと言うし。

 経済的にも余裕がなければ通うこともできないのだろう。

 

「今日の食事当番はおれ。掃除当番は確か、リリアンだったかな?」


 そう言いながら、グランは目の前を指差した。


「あそこがおれたちの寮だよ。いやー、遠かったねぇ」


 そう言ってグランは寮のほうへ走っていく。

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