第16話 干ばつって部分的に起こる現象じゃないから!?

「今日はね、調査をするよ!」


 テオとメイを前に、そう宣言した。

 二人は首をかしげた。確かに、畑仕事をするんだけど、なぜ育たないのか理解したいのだ。植物が育たないのは大きく三つの原因に分かれる。


一つ、水。

二つ、土。

三つ、季節と空気。


 どちらにせよ、環境が大きく関わってくる。育て方なら、改善できるが水や季節が問題なら、どうしようもない。

 しかし、水に問題はないことが昨日料理をしていてわかった。テオもこの国の水はきれいだと、言っていたし。土の場合は、毒素が含まれているとかじゃなければ、肥料次第でなんとかなるかもしれない。


「さて、畑にいこうか」


「「あいあいさー」」


 二人は仲良く敬礼した。俺は笑ってしまう。弟妹を思い出すなぁ。

 そして、二人に小さなバケツと、スコップを手渡す。俺は大きなスコップと鍬だ。バケツも持っている。バケツには植物の種を入れている。ちゃんと包装しているよ。


「二人は畑やったことあるの?」


 家の裏の畑に向かいながら、二人に聞く。二人はうなずいた。


「お母さんのお手伝いをしてるの」


 メイがいった。メイは家庭にお金がないから、家で家庭栽培をしているといった。テオも同じようで、メイに同意している。

 そして、畑に到着した。

 俺は唖然とすることになる。


「部分的に干ばつでもしたのかよぉ」


 畑は乾いて、土も固まって地割れみたいなのがある。マジか。まず耕すしかないじゃんか。でも、なにか変だ。周りの雑草地帯にはそんな状態が見られない。

 本当に部分的だ。


「雑草すら生えてない······」


「······フツーでしょ?」


 テオがいった。これが当然ですと?

 絶対に違います。俺は魔法で解析する。

 成分に問題はない。普通の土だそうだ。


「ねぇ、この国ってみんな耕さないの?」


「お兄ちゃん、耕すって何?」


 メイが首をかしげた。つみました。

 この国、畑耕す文化がないそうです。ねぇ、可笑しい。耕さないと、土の栄養のあるところは底にあるだけなのに。

 

「よし、畑を耕そうか」


 気合いを入れた。だって、耕さないと、植物は芽を生やせないんですもの。固い土から芽を出そうと、根性を出せば別かもしれないけどね。


 俺は畑に入り、土に触れた。さらさらと乾いた土。


「あれ?」


 どうやら、ただ乾いている訳じゃなさそうだ。ここの世界の土は魔力のもと、

魔素というものが含まれているらしいのだ。だが、ここの土にはちょっとも含まれていない。

 魔素は魔力が高いものと、低すぎるものが感知できるらしい。ザックさんいわく、魔力が高い俺はそれを感知していると。


「魔素が足りない」


「え?」


 俺は声に聞き返した。振り向くと、テオがいったのだと気づく。俺はテオをじっと見た。彼は、魔素が感知できている。


「魔素がない」


 テオは繰り返してくれた。俺はテオの魔力を見る。魔力は見ようとすれば、器のようが見えるらしい。

 テオからは見えない。メイからは小さなコップが見えた。


 テオは魔力がない。


 気づいてしまう。俺は彼から目を背けた。彼は自覚している顔をしている。だから、俺は青ざめた。魔力の器を持たないというのは、魔力が存在できないと言うことだ。ダリアがあの森を歩いていたときに、そう話していた。


「魔素は、野菜にも含まれる。

 てことは、この国の子供の魔力が低いのは、

 土にすら魔力が含まれてないから」


 呟いて、理解する。


「ねぇ、テオ、メイ。

 ちょっとね、やりたいことがあるんだけど」


 思い立った、馬鹿げた方法がひとつある。メイは目を輝かせた。対称にテオは何かに気づいたようだった。

 

「雨を降らせよう」


 天の理に背く、魔力を最大活用した方法だ。

 

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