第15話 この街の子供の朝、早くないかな!
俺はテーブルについて、朝食中である。
「ふふ、お芋がホクホク······」
パンはそのまま食べることにした。なんか、チーズと蜂蜜と言う贅沢はできそうになかったのだ。とっても、魅力的ではあるが。食料が尽きてしまう。
すると、窓の方から小さな手が見えた。コンコンと、窓を叩いている。もしかして、俺呼ばれているのかな。
「あ、ザックさんがいってた」
子供たちかな。
でもさ、今、午前の六時なんだよな。早くない?
俺は今、朝食を食べているんだけどなぁ!
「はぁーい」
ちょっとテンションは低いが、俺は窓を開けて、訪問者を見る。子供たち、というより二人の子供だ。そこまでたくさんはいない。そう言えば、ダリアが最近子供が育たないって、言ってたな。
子供は昨日の女の子と、ちょっと大人しそうな男の子の二人。
「おはよう。二人が今日一緒に畑作ってくれるっていう······」
「うん、そうだよ!」
女の子の方が元気にいった。男の子の方は、何かボーッとしている。俺と目が合うと、会釈はしてくれたが。
すると、男の子の方から腹の虫の音がした。グルル、と。
「二人とも朝ごはんは食べた?」
俺が聞くと、二人はフルフルと首を振った。
「じゃあ、食べていく?
今さ、俺も朝ごはん食べているから」
「······いいの?」
男の子が少し時間差で聞いてくる。俺がうなずくと、男の子は少し嬉しそうに顔を赤らめた。女の子も嬉しそうにしている。
俺は、二人に扉から入ってくるようにいって、キッチンに向かう。
「小さなお皿は、······あ、あった」
戸棚に手を伸ばして、取り出す。少し小さなお椀。俺は、それにポトフを入れる。スプーンとフォークの両方持っていく。
ついでにフランスパンも切って、二人のにはチーズトーストの上に蜂蜜をかけた。俺は贅沢まだしないけど、せっかく来てくれたのだから少し甘やかしても気にしないだろう。
「ごめんね、待たせちゃって」
お盆にのせて二人の朝食を持っていく。二人はテーブルにきっちりついて、おとなしく待っていた。何か、少し新鮮な光景だ。
中学生の頃、帰りの遅い両親のために、弟妹に夕飯を作っていたことを思い出す。あのときは、弟妹もこんな風にテーブルで雛鳥みたいに待ってくれてたなぁ。ちょっと、寂しくなる。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
女の子はポトフを嬉しそうに眺めた。男の子も瞳を輝かせている。その感覚がよくわかる。
家で休みの日に母親が、ケーキを作るたびに俺もこんな瞳をしてたんだろうな。でも、ホームシックになってたら、ちょっとよくない。
「どうぞ」
俺は二人にスプーンとフォークを差し出した。二人はうなずいて、ポトフに口をつけた。
「······これ、おいしい」
「うん、とってもおいしい。
あまりお野菜食べれないから、今日はいい日だね!」
男の子の言葉に、女の子がそういった。
俺の心が少しだけ痛む。野菜が食べれない、そう聞くことはあまりない。なかった。間近で聞いて、やっと実感がわいた。
野菜を食べなければ、肉体の一部が形成されない。そりゃあ、育たなくなる。形ばかり育っても、満足に食べられないっていう経験は、結構堪えるものだ。
俺は知っている。弟妹ができる前、家庭が不自由でまともな食事ができなかったこと。今はわからないけど、弟妹が中学生になった今、食事は満足にできていた。学校の制服は、不要が足りなくて俺がアルバイトして、見よう見まねで作ったけど。
「じゃあ、一杯食べてね。おかわりもあるから」
俺は二人を見ていう。今日くらいは、この子達に贅沢をさせてあげたい。いつかは、この街が豊かになれるくらいには、頑張ろう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
さて。
朝食を終えて、午前八時。
朝食に時間がかかったわけではない。この時間に出ようといって、二人を家のなかで過ごしていたのだ。
その間、二人の服があまりにボロボロなので、新調するべく寸法を計っていた。布は魔法で作ればいい。メジャーは裁縫セットのなかに入っていた。現代風の服ではいけなさそうだったから、この街の服をアレンジして、デザインでもしてみよう。
「······兄ちゃん、今日はなにするの?」
男の子の方がいった。彼はテオというらしい。女の子はメイ。
俺はうでまくりをした。
「今日はね、調査をするよ!」
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