第4話 大きな雀を拾ったよ!

 しばらく畑は耕さなくていいし、マメも魔法で育つスピードを遅くした。今日はモンスターが出る森の近くにいってみようと思う。怖いやつらがいるらしいから、入りたくはない。だから、近くまでいくのだ。

 だが、その森を抜けなければ街には行けない。


「武器もナイフみたいなやつだけだし······」


 ちょっと心もとない。

 腰にさしたナイフと、初期装備だけだ。グリモワールも持ってきたが、詠唱がなくても俺の場合は魔法が発動した。詠唱しなくても発動するのは、簡単な魔法だけらしい。


「うぅ、ホントにツイてないな」


 ローブのフードを深く被って、ため息をつく。すると、モスンとした何かにぶつかった。

 デカイ。

 俺の身長の半分くらいはある。デカイ、もふもふの物体がぶつかった。

 

「うぇ、何ぃ?」


 思わず情けない声が出てしまった。しかし、その物体はピクリとも動かない。それに怪我をしている。それはあるものに似ているが、とても真っ赤だ。


「赤くて、おっきな雀······?」

 

 俺はそれを抱えあげた。雛鳥フォルムのそれは、かわいいけど血まみれだ。なんか、一匹だけはぐれたのかな。切り傷が多いし、手当てして野に放してあげよう。

 俺はそれを家に持ち帰った。

 良かった。モンスターの森の近くまでいくことにならなくて。怖いもん。



◆◇◆◇◆◇◆◇


 その大きな雀を家に入れるのは一苦労だった。真ん丸フォルムは、本当に扉からはまって抜けなかったのだから。それを必死に引っ張って、家の中に入れる作業に十分。


「手当てはしたけど、汚れとか餌とかどうしよう」


 俺は呟く。餌なら芋とか大量生産できるし、豆もスピードをもとに戻せば大量だ。肉食なら、仕方ないけどこの身を差し出すしかない。

 すると、おっきな赤い雀が目を覚ました。

 つぶらな真ん丸お目めが愛らしい。俺はそのデカ雀の顔を覗きこむ。


「起きたのか?

 大丈夫か、怪我していたんだよ、お前」


 もふもふの頭を撫でて、おっきな赤い雀に話しかける。そいつは驚いたように目を見開き、ピイピイと鳴く。

 俺はそのもふもふを撫でながら、首をかしげた。なんかわからんけど、何とかしてみよう。俺はおっきな赤い雀に笑顔を見せた。まずは名前だな!



◇◆◇◆◇◆◇◆


「よし、お前の名前はエルだ」


 俺は宣言する。エルは歓喜するように鳴き、俺に飛び付いてくる。数分でずいぶんなついた。エルはエルメスの略称だ。有名なバックブランドの名前ではない。

 エルはかわいい。異世界に来る前、ふれあっていた雀とは色もデカさも違うけど、雛鳥なだけあってかわいい。そもそも、何の雛鳥なんだろうか?

 俺は暖かいもふもふを堪能しながら、考える。

 お風呂に入れたら、乾かなくなるのかな?

 家の中が水浸しは嫌だな。


ピイピイ


 エルは可愛らしく鳴いている。鳴き声はさほど大きくなく、近所迷惑を基本気にしなくていい。そもそも、近所は森をひとつ越えた先だ。それか、すぐ傍のキノコの森だ。

 

「そうだ。エル、明日あの森にキノコ狩りに行こう?

 数株分けてもらえば、しばらくの食料と量産作業ができるよ」


 俺はうふふと笑う。物騒なあの青と緑のキノコも食べられるし、育て方は本に載っていた。エルはよくわかっていないようだが、楽しそうに鳴いている。

 夢が広がるなぁ。

 俺はエルに抱きつく。もふぎゅっと、暖かい物体が包んでくれる 


◆◇◆◇◆◇◆◇


 エルをお風呂に入れた。もう夜である。

 エルとのお風呂は少し困難だった。大きすぎて、入るには狭かった。でも、乾かす必要はなくて、エルが勝手に乾いていた。乾いたら、何かよりモフンとしていた。

 ついでに、夜寝るときも一緒だったのだけれど、ベッドにのかった重量級のもふもふは、幸せであったが重くて眠れなかった。

 自然に眠っていたけど。魘されていたことだろう。

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