第3話 異世界って、植物が育つんだよ!

 掃除を終えた俺は、満足げにお風呂にお湯を入れる。久しぶりの大掃除は楽しかった。とてもエンジョイした。

 何故かって、それは俺が家政夫のアルバイトをしていたから。

 でも、もとの持ち主がよく手入れしていたのか、ものが傷んでいることはなかった。鍋も皿もかけていないし、勿体ないくらいだ。

 

 ついでに、面白い本も見つけた。

 "楽しいみんなの農業~初級編~"と、その続きだ。他にも魔法の使い方や、武器の種類などがかかれている本もある。モンスターのかかれている本もあった。ちょっと物騒で涙が出そうになった。

 ただ、一人で暮らすには広い家だった。書庫と思えるものに、寝室。バスルームやトイレにキッチンはわかるが、物置部屋のようなものもあった。まぁ、存分に使わせてもらおう。


「あとは、物置部屋にあった苗とか種の扱い······」


 見つけた本を見ると、それがリンゴやミカンのようなものだと知った。これが大きくなるまで育てればいいらしい。

 種は長く保存がきくらしいので、暫くは畑を耕すことに集中できる。ついでに麦の種もあって、納屋には脱穀機もあった。前の住人は農業をしていたのだろう。


「むふー、取り合えず畑を耕して、当分の食料を作ろう。

 でも、暫くは何を食べればいいんだろ?」

 

 鼻息荒く、気合いが入っていたは良いが、今の状況を打開する方法を見ければならない。


「植物の成長促進の魔法ってないかな?」


 俺は首をかしげた。そしてもとから持っていた魔法の本と、残されていた古い本を見る。どちらにも載っていない。

 ちょっとがっかりだ。


「うぅ、どうしよ。明日生きてるかな、俺」


 不意に自信がなくなっていく。それからお風呂のお湯を、止めにいかなきゃいけないことを思い出す。あふれでてたら、水道代が。


「あれ?

 ここって、水道とか光熱費とか在るのかな?」


 残っていた本にはないけど、チュートリアルも特になにもいっていないし。え、それってやばくない? わりと、命の危機だったりするん?

 俺は納屋に向かった。

 うん、畑耕して、育てよう。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 畑、耕したよ。

 魔法で耕すことってできたんだと、感心した。

 俺は今、チマチマと魔法を使わずに種を蒔いている。だって、耕す時間があまりに少なくて、動いた気がしないのだもの。

 苗は植えた。植えた瞬間にもっさりと、木が大きくなった。

 実はなっていないが、大きな気になってビックリしたと同時に、嬉しくなった。なんか、ファンタジーって感じだった。


「種はニンジンとジャガイモとか、腹の足しになるのをまず植えとこ!

 あとは、なんだろうこれ?

 ま、植えとこう!」


 俺は豆のような種も蒔く。本を手本に。

 思ったことなんだけど、ニンジンもジャガイモも、異世界じゃ名前が少し違うんだよなぁ。味の特徴とか、本を読んでみて似てるなとは思ったから、そう思っただけだけど。


「これももっさり育つのかな?

 観察日記とか、付けんでも良いのかな?」


 思わず鼻唄を歌ってしまう。次は水やりだ。でも、ジョウロががなかった。

 俺は急いで本のページをめくる。


「水は魔法であげましょう!、って」


 ん?

 俺は首をかしげた。魔法の使い方とかわからないんだけど。

 それから、とにかくあの露出狂がやっていたみたいに手をかざす。すると、小さな雨雲ができて、小さな畑に雨となって降り注ぐ。

 俺は、ちょっと感動である。

 畑の時だけなるらしい。本に書いてある。


「おぉ~。すごいなぁ。」


 小さな雨雲の雨がやむと、むくりと芽が生えた。そこから葉や茎が延びて、豆みたいなのは枝豆みたいなのになった。ニンジンも土の中から、オレンジと黄色が覗いている。ジャガイモは引っ張り出さなきゃいけないけど。


「うふふ」


 笑ってしまう。ちょっと楽しいけど、育てすぎてしまったな。

 すると、本に保存方法が書いてある。

 

「イモは切り分けて、また植える。

 マメは一度育ったのを取り除いたあと、また生えてきます」


 へぇ~!

 すごいなぁ。もしかして、チュートリアルさんが言ってたのって、育ちすぎるから生活のためにも売れってことなのかな。なら、便利だな。お花とかも余裕ができたら育てよう。

 


◇◆◇◆◇◆◇◆


 野菜を掘り起こした。ニンジンは保存箱という冷蔵庫みたいなのへ。イモは一部を種用に魔法で加工して、マメは収穫して保存箱へ。

 苗は木になっただけだが、急いでいるわけでもない。

 あとやることは食事と、入浴と、睡眠。

 

「でも、調味料はないんだよな。

 街で買うのかな? 保存してた塩はあったけど、使えるんだったら使おう」


 そう意気込みながら、ソファに腰かけた。黒いローブがやけに暖かい。その暖かさに誘われて、眠気が襲いかかってくる。

 惰性はよくないけど、一寸だけ······。

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