第二八階 不遇ソーサラー、襲われる


名前:マイザー

年齢:24

性別:男

ジョブ:ソーサラー

レベル:51


LEP541/541

MEP906/906


ATK33

DEF583

MATK167

MDEF118

キャパシティ10


固有スキル


【転生】【先行入力】【効果2倍】

【レア運上昇】【先制攻撃】【必中】

【鉄壁】【呼び戻し】


パッシブスキル


ムービングキャスト8


アクティブスキル


マジックエナジーロッド8

エレメンタルプロテクター3

コールドボルト5

コールドホルダー3

サモンノーム3

サモンウンディーネ1

インビジブルボックス5

ベナムウェーブ6

エレメンタルブレス3


「――サモンウンディーネ」


 真っ青な体色の小さな少女が足元に現れる。


 あれから俺はエリナとともにダンジョンで狩りをしてレベルを一つだけ上げ、さらにコールドボルト5、コールドホルダー3、エレメンタルプロテクター1という条件を果たしたので、風、火、地に加えて水の精霊も召喚できるようになっていた。


 エレメンタル系に加えてサモンノームもレベル3にしたので、あとはサモンウンディーネを3にまで引き上げればいよいよソーサラーにとって最強ともいえるスキルが誕生する。それはディスペルだ。


 このスキルは相手にかかっているバフを全て取り消すというものであり、これだけ苦労して覚えるのも例の通り魔に付与されているであろう透明状態等、強化スキルを解除するためだ。


 ただ、今すぐやつを誘い出すつもりもない。これはいずれ訪れるであろう復讐の準備段階にすぎず、本来の目的は別にあった。それは本来のエリナの記憶を戻すべく一緒に狩りをすることであり、今俺たちがいるのは最も通り魔事件が多いという三階層だ。


 一階層や二階層は敵が弱い分警戒もかなりされてるが、三階層からはヘルワードというすばしっこい上に攻撃力も高い本型モンスターやタフなミイラであるマミーが出てくるため、それらに気を取られている間に通り魔にやられてしまうケースも多いという。また、自信をつけた冒険者が単独で狩るには一番ちょうどいいと言われてるのもここなので狙われやすいというのはあるんだろう。


 まだ復讐の準備段階なのにあえてここでやるのは、エリナが殺された階層でもあるからだ。あいつが最も未練を残して逝った場所だろうからな。エリナ……お前はここで、カイルや兄を殺した憎い通り魔にやられてしまったんだ。悔しくないのか。仇を取りたくないのか……。


「――プロテクト! ヒール!」

「あ……」


 気付けば俺は本に噛みつかれていた。そりゃエリナが慌てるはずだ。


「クアゼル、痛くないのですか……?」

「【鉄壁】があるからな。エリナのビンタのほうがよっぽど痛い」

「……冗談を言える余裕もあるのですね」

「むしろ、エリナが真面目すぎる」

「優秀と言ってください」

「あはは……」


 確かに彼女はプリーストとして凄く優秀だと感じる。ちゃんとヘイストやプロテクトを切れ目なくかけてくれるし、ヒールもダメージを食らうタイミングで、それも少ないダメージだとMEPを温存するためにスキルレベルを絞ってやってくれるんだ。以前のあいつだと俺が催促するかLEPがかなり減らないとやってくれなかったからな……。


「クアゼル、笑うのはかまいませんけれど、例の通り魔が現れる可能性もあります。充分にご注意なさってください」

「あ、ああ……」


 しかも彼女はやたらと用心深い。ソロ狩りじゃないので大丈夫だとは思うが、ほかにソロがいなかった場合は標的にされる可能性もあるしな。ただ、狙われたとしてもパーティーで共有できる【鉄壁】や【先制攻撃】がある上、【先行入力】で定期的に罠も張り巡らせているから大丈夫だろう。


 もちろん、【反射】を持つエリナをも殺した強者相手だから油断はできない。実はあれから似たような通り魔事件が何度か起きているのがわかったから、おそらく同一人物の仕業で【反射】を食らっても致命傷までは至ってないってことだ。そんな厄介なやつを相手にする以上、こちらも念入りに準備しなきゃいけないってことでディスペルを覚えようとしているってわけだ。


 今俺たちの周囲を泳ぐようにうろうろしているウンディーネはそれを覚えるためなんだが、これにはほかにも用途がある。初期のレベル1の状態だと、エレメンタルブレスのような無属性のスキルを水属性に変えてくれて、レベル2になると水耐性、レベル3に至っては水場(小)が作れるようになるんだ。


 水場を周囲に張り巡らせておけば、たとえ相手の姿が見えなくても侵入してきたことがわかるってわけだ。波紋がしたら【先制攻撃】によるディスペルで敵の正体を暴いてやればいい。


 というわけでしばらく緊張感のある狩りが続いたわけだが、ウンディーネのスキルレベルが3になって水場(小)とディスペルを覚えても変わったことは何も起きなかった。やはりペアなのが大きいんだろうか。あと、通り魔事件の影響かほかに狩りしてるやつがいなくて、襲ってくるミイラたちの量が多かったこともあったのか結構あっさりいったな。


「ノルマも達成したし、そろそろ休憩しようか」

「そうですね。私も少し疲れました」

「……」


 俺はエリナと笑い合い、手をつないで帰ろうとしたわけだが、ふと立ち止まった。


「どうしました、クアゼル?」

「あ、いや、なんでもない……」


 心配させたくないので言わなかったが、手をつなぐという極自然な行為だったのにが襲ってきたんだ。一体なんでだろう……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る