第十五階 不遇ソーサラー、焚き火する
「ちょっと、待ちなさ――」
「――ぐはっ……」
俺はエリナに魔眼の帽子とアークワンドを手渡してまもなく自殺する。
さすがに三度目になると手慣れたもんだ。眩い光が終わったと思うとエリナが現れた。またこのパターンか。ただ、いつものように頬を膨らませてるだけで張り手は来なかったが。あれはスキルにしてもいいくらいの威力だ。
「死ぬのはいいけど、もうちょっと私のことも考えてよね! はいこれ!」
帽子と杖を返してくれた。エリナにはさすがにえげつないところを見せすぎたかもしれない。だがこの程度でびびってるようじゃ俺の仲間どころか協力者にすらなれないな。
「でも、もう慣れただろ? 慣れてもらわなきゃ困る」
「慣れちゃったわよ! 変なのも!」
変なのってあのキノコのことか。そういやアレと同じものが今股間に生えてるんだよな。これが最後の一本で絶滅危惧種だが誰も困らない。さて、違和感をなくすために46まで上げるとしよう。パーティー情報でやつのレベルは確認済みだ。
「んじゃ、狩りするか?」
「うん!」
エリナって笑うんだな、知らなかった。さて、ステータスを確認するか。
名前:ルーサ
年齢:22
性別:男
ジョブ:プリースト
レベル:41
ギルド:『九尾の狐』
LEP458/458
MEP924/924
ATK18
DEF16
MATK140
MDEF127
キャパシティ8
固有スキル
【転生】【先行入力】【効果2倍】
【レア運上昇】
パッシブスキル
モンスター耐性4
ヒューマン耐性3
アクティブスキル
ヒール7
ヘイスト6
プロテクト6
リザレクション6
エクソシスム6
ホーリーアロー2
お、リザ6なのか。重度の欠損を治すのは無理だがあいつもやっぱりリザキルできたんだな。最初のとき自殺してなかったら危なかった。
てかホーリーアロー入れてたならあのとき使えばよかったのに。スキルレベル2でしかも【効果2倍】がない状態だから威力的にしょぼいと思って、ある程度近寄ってエクソシスムしか選択肢はないと考えたんだろうか。頭に精子が残っててそこまで思考が回らなかったのかもしれない。
さあソーサラーに戻してスキルを変更するとしよう。
名前:ルーサ
年齢:22
性別:男
ジョブ:ソーサラー
レベル:41
ギルド:『九尾の狐』
LEP479/479
MEP830/830
ATK20
DEF19
MATK143
MDEF118
キャパシティ8
固有スキル
【転生】【先行入力】【効果2倍】
【レア運上昇】
パッシブスキル
ムービングキャスト5
アクティブスキル
マジックエナジーロッド6
エレメンタルプロテクター2
サモンシルフィード3
インビジブルボックス4
ベナムウェーブ6
マジックエナジーストライク7
コールドボルト3
やっぱり俺にはソーサラーが一番落ち着く。フレイムボルト5の代わりにコールドボルト3を入れた。着々と計画も進んでるし今のところ順調すぎて怖いくらいだ。
◆◆◆
今日は地下六階層で狩りをすることになった。やはり新しいところで狩りをしたいしな。
ここは蛆エリアと呼ばれ、溢れんばかりのマゴット――蛆虫たちが餌を求めて這い回る階層だ。もし体の内部に入られたら最後。生きたま少しずつ食べられるので、その場合苦しまないように味方が殺してやることになる。
そのため冒険者、特に初級から中級のパーティーにとっては行きたくない階層の一つと言われている。蛆はすばしっこいので物理ではなく魔法系のスキルが適しているらしい。
「エリナ、気を付けろよ」
「わかってるわよ。そっちこそ気を付けてよね!」
六階層の前まで来たが早くも蛆たちが集まってきているのがわかる。隙間なくいそうだなこりゃ。【先行入力】が使い辛い場所だ。
「――ベナムウェーブ!」
「ヒール!」
凄い量だ。通路に出ると飢えた蛆どもが飛び掛かってきてあっという間にLEPが削られていく感覚がした。ヒールがなければ階段に逃げ戻ろうと考えたはずだ。既にエリナは避難した。毒霧があってこれだからな。
ヒールを何度か浴びる間にようやく蛆が毒で息絶えていく。それでも新しい蛆がどんどん湧いてきてエリナのヒールのペースが落ちるほどだった。MEPがきつくなったんだ。たまらず階段に戻ると蛆がびっしりと前の通路を埋め尽くしているのがわかった。
「ちょっとここはまだ辛いわね。場所変える?」
「うーん……」
無敵エリアの階段でスキルを使って倒しても経験値は入らないようになっているし、倒しても倒しても湧いてきてきりがない。ここを突破するのは人数がいないと厳しそうだがこのまま戻るのも悔しい。何かいいスキルはないか。マジックフォンでソーサラーのスキルツリーを見ているとあるスキルが目に入った。
フレイムウォール。これだ。フレイムボルトを5にすることで覚えられるんだ。固有スキルが強すぎたのもあるがこんな大事なスキルを忘れていたなんて。
「どうするの?」
「まあ見てなって」
「じゃ、じゃあ見てあげるわよ! でも危なくなったらすぐ戻りなさいよね!」
「わかってる」
まだスキルレベル1だが、ベテランのウィザードはこのスキルを使うのが非常に上手い。テレビの映像でも何度か見たが、派手なスキルよりもこういうのをもっと評価されるべきだ。まず階段前で毒霧を使って掃除した後、突っ込む。
「フレイムウォール!」
炎の壁が瞬く間に立ち上り、蛆どもが蒸発していく。地下六階層の階段前には左右に分かれた道があり、挟み撃ちのように蛆が群れを成してやってくるわけだが、ここで大切なのは自分を中心にして横ではなく縦に炎の壁を置くことなんだ。これによって蛆たちはぶ厚い炎の壁を突き破らなくてはならなくなる。横置きだと幅はあるが薄くてあっさり貫かれてしまうんだ。
「クアゼル、凄いじゃない!」
エリナが階段で小躍りしてる。たまに外れてこっちに来るのが数匹いるが、プロテクトがあるしシルフィードも守ってくれるしこれくらいなら痛くも痒くもない。炎の壁を随時置きながらコールドボルトで残りの蛆を始末していく。【効果2倍】なのも大きくてさくさく落ちるな。
――よし、スキルレベルが5になった。これで残りはアースボルトだな。フレイムウォールを覚えてからはとんとん拍子でレベルが上がっていった。
名前:ルーサ
年齢:22
性別:男
ジョブ:ソーサラー
レベル:46
ギルド:『九尾の狐』
LEP516/516
MEP923/923
ATK23
DEF22
MATK176
MDEF138
キャパシティ9
固有スキル
【転生】【先行入力】【効果2倍】
【レア運上昇】
パッシブスキル
ムービングキャスト6
アクティブスキル
マジックエナジーロッド6
エレメンタルプロテクター2
サモンシルフィード4
インビジブルボックス4
ベナムウェーブ6
マジックエナジーストライク7
フレイムウォール4
エレメンタルブレス1
キャパシティが9になってからは、スキルレベル5になったアースボルトの代わりにエレメンタルブレスを入れていた。四色のスキルを5にすることで発現するソーサラーの上位スキルだ。いわゆる中魔法の部類だがソーサラーの範囲スキルとしては最強だ。何も召喚していない場合はマジックエナジーストライクのような無属性魔法攻撃であり、シルフィードを呼び出している場合は風属性魔法攻撃になる。
蛆どもはLEPが少ないから炎の壁だけでいいが、強敵を相手にする場合こんなもんじゃないから、こうした範囲魔法攻撃は必ず持っていないといけない。
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