第13話

 待機室に着いてすぐに美和子の電話が鳴る。

「はい。指名ですか。誰でしょう?ああ、写真指名。解りました」

指名の電話だった。インターネットのサイトから写真を見て指名をくれたらしい。

(変な人ではありませんように)

 毎回の事だが祈らずにはいられない。相手がきちんとした人だという保証など無いのである。

身支度を整え、スタッフと一緒に目的のホテルに向かう。205号室、美和子は部屋に入る。暗がりでよく見えなかったお客さんの顔がよく見えてくる。

「あっ!」

 小さく叫ぶ。どこかで見た顔だ。誰だったろう。そうだ。西原さんだ。西原晃さんのお父さんだ。

「なんだ。写真とずいぶん違うな。細いなー」

 どうやら気づいてないようだ。一回会っただけだから当然だろう。

「こんなに細くて大丈夫なのか」

「チェンジしてもいいんですよ。チェンジします?」

「いや。いい。時間が無いのでね」

「ところで君、できるのか?」

「えっ?」

 美和子は聞き返した。

「だから、やっても大丈夫なのか聞いてるんだ」

「私の店は本番行為は禁止です」

 本番を求めてくるお客さんはよくいる。

「法律で決まっているのです」と諭すが、なぜだか皆解ってくれない。この人もそうだ。

「そんな事言わずに」

 抗う美和子に向かっていきなり襲いかかってきた。美和子は抵抗するが中々手を緩めてくれない。

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