第12話
止めるのは嫌である。もしかしたら少しアルコール依存ぎみなのかもしれない。美和子は今迄の飲み方を改めようと思った。
病院を出ると秋雨のせいで少し肌寒い。いつものように帰りがけにスーパーに寄る。しばらくの間、陳列棚のビールを見る。しょうがない。いつも買っているビールの量を半分に減らした。本当は休肝日が必要なのだろうがいきなり今迄の生活習慣を変えるのに抵抗がある。悩みに悩んだあげくビールの五百ミリリットル入りを一本買う。
(摂食障害も治したいな)
そう思い惣菜コーナーにサンドウイッチがあったのでそれも買った。帰ってから晩酌を始めると買ったビールはすぐに無くなってしまった。サンドウイッチはまだ半分以上残っている。
(焼酎の水割り、薄いのならいいか)
酔ってしまうと自制が効かない。家にある焼酎で水割りを作り、ここは早く寝てしまうに限ると、新しく貰った薬を飲む。少しするといつもより強い睡魔が襲ってきた。美和子は布団に吸い込まれるように眠った。
目が覚めたのは朝の六時、八時間以上も寝たことになる。驚きと同時に嬉しい。朝のシャワーを浴びてからゆっくりと仕事にいく支度を始めた。
(飯塚さん、そろそろ呼んでくれるかな)
いつも指名してくれる飯塚さんに会いたい。そうして母親の悩みを話して慰めて貰いたい。そんな思いが頭をよぎる。これではどっちがお客さんか解らないな。美和子は心の中で笑った。
お気に入りの綺麗なスーツに着替えて待機室に向かう。今日は稼ぎ時の月末である。
(こんな事いつまで続けるのだろう)
いつまでもデリバリーヘルスを続ける訳にもいかないのは解っている。一生働ける仕事、もしくは結婚をして専業主婦で生活をするか。どちらかの選択肢を選びたい。産んでくれた母親を疎ましいと思ってはいけないと思うが、美和子は母親がいなかったらどんなに良かったかと思う。月々渡さなければいけないお金が美和子を縛りつける。
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