第11話

 次の診察の日が来る前に薬は無くなってしまった。

「すみません。薬を紛失してしまって。間違えてゴミと一緒に捨ててしまったようです」

 嘘がバレるのではないか。びくびくしながら医師にそう告げる。ここ十日程美和子は殆ど仕事にもいかず、薬とお酒で過ごしている。

その間母親がお金を取りに来た。美和子はお金を渡した後、

(生活費が足りなくなれば借金するしかない)と思った。それがますます美和子を現実から逃れたい気分にさせた。

(ずっと眠っていたい)

 そんな気持ちがここしばらく続いている。

「気をつけて下さい。薬を渡すのにも決まりがあるんですから」

「すみません。気を付けます」

「血液検査の結果がでています。肝機能の数値が悪いですね。ガンマが二百もある。お酒は飲んでますか?」

「少々です」

 また嘘をついた。

「そうですか。お酒は当分控えてみて下さい。薬との同時摂取は禁止です。念の為薬の種類も変えておきます」

 美和子は薬を変えられる事に不安を覚えた。

「薬を変えて眠れるのでしょうか?」

「大丈夫です。眠れるはすですよ」

 眠れるなら今の薬に拘りはない。美和子は承諾して診察室を出た。

(肝機能が悪いと言われっっちゃたな)

 少々心配である。まあキャバクラ時代から浴びる程飲んでいるのでしょうがないのか。

(控えてくださいと言われたのだから節酒すればいいかな)

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