第9話
マンションに着くと、帰りがけに買ってきた、刺身と豆腐と海藻サラダをスーパーの袋から取り出す。冷えたビールも忘れずに買ってきた。
思えば何時からビールが美味しいと思うようになったのだろう。小さな頃母親のビールの泡を舐めてみた時は
(苦い!不味い!)と思った。それから大人になってキャバクラで働き始めた時も美味しいとは思わなかった。付き合いで嫌々飲んでいたのである。
そんな事を思い返しながらビールを飲んでいると突然電話が鳴った。画面に『白石陽子』と出ている。母からだ。あまり出たくなかったが、家に来られたら堪ったもんじゃない。美和子は電話にでた。
「はい」
「もしもし、美和子、あのねお金貸してくれない?」
「お金ならこの前渡したはずでしょう」
「そうじゃなくてね。車の車検があったの。それで後十五万欲しいの。用意してくれないかしら。宜しくね」
冗談じゃない。嫌だと言いたい。だが過去に断った時、美和子のマンションの前で『人殺し』だとか『死んでやる』だとか言って大騒ぎをされたことがある。それを思い返すとはっきり嫌だと言えない。
「十五万も渡すと私が生活できないよ」
「どうせつまらない仕事をしているんだろうよ。ソープランドとか結構貰えるらしいよ。考えてみれば?お金は明日貰いに行くからね」
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