第8話

「私は夜眠れなくて睡眠薬を貰っています。」

「僕もです。眠るには体力が必要だって言われました。そうかもしれませんね」

 確かにそうかも知れないと思い、美和子は頷いた。

少しすると

「西原さん。西原晃さん」

 看護師さんの呼ぶ声が聞こえてきた。

「はい」

(西原さんというのか)

 美和子は名前を憶えてから持ってきた小説を読み始めた。小説に没頭していると西原さんが診察を終え戻ってきた。

「ただいま。もう診察終わりました。これからお会計をして薬局だ。一日がかりになってしまいますね」

「そうですね。混んでいるとは聞いていたけれど、疲れます。」

 美和子は困った顔をしてまた笑う。西原さんとは何だか話が会う。

雑談をしていると西原さんがお会計に呼ばれた。

「それでは」

「はい。お大事に」

 殆ど同時に美和子の順番がやってきた。

「どうぞ」

 案内されて診察室に入る。

「あれから薬を飲んでどうですか?よく眠れていますか?」

「はい。」

「ご飯は食べれていますか?」

「いいえ。あまり食べれません」

「そうですか。心配ですね」

「・・・・」

「今日は同じ薬をだしておきます。それから、血液検査をしましょう。最近検査をしていますか?」

「いいえ。二年位はしていません」

「栄養状態も心配なので是非検査をして下さい」

「解りました」

「また待合室で待っていて下さい」

 医師にそう言われ美和子はお礼を言って診察室を出た。

 言われたとおりに待合室で待つとすぐに名前を呼ばれ『処置室』と書かれた部屋に行く。若い可愛らしい看護師さんが待っていた。

「こんにちは、白石さん。血管細そうだねー。さて、どっちの手から取る?」

「どちらでもお好きな方から」

「じゃあ右手から見てみようかな。はい右手見せて」

 美和子は右手を差し出し、置いてあった台の上に乗せる。看護師さんがチューブで右手の腕を縛る。

「やっぱり細いね。失敗したらごめんね」

 そう言って採血をしようとするが、三回失敗であった。四回目でようやく採血ができた。ホッとした後、結果はいつ分かるかと聞くと、次の診察の時に聞けるとの話で合った。

(当分採血は嫌だな)

 そう思いながら美和子はメンタルクリニックと薬局を終えてマンションに向かった。

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