第7話

 早いもので最初の病院受診から二週間がたった。今回も引き続き薬を貰いたいと、美和子はメンタルクリニックに足をはこんだ。前回貰った薬はよく効いている。このままの睡眠リズムを崩さずに生活していきたいと思う。

もう一つの問題の病気、体重は増えはしないが減ってもいない。

(もうちょっと食べなくてはいけないな)

 そう思うがなかなか上手くいかない。

相変わらず混んでいる待合室で座る場所を探していると、

「こんにちは。」

気さくに声を掛けられた。

「ああ。この前の。この前は有難う御座いました。よく会いますね」

 「そうですね」

偶然にもこの前の摂食障害らしい男性と会った。確か晃という名前だった覚えがある。今日は父親はいない。また後からくるのか。あまり会いたくないタイプであった。そんな事を考えていると

「ご飯が食べられないんです」

 隣に座った男性が唐突に話し始めた。

「失礼。この前の話、聞かれたかと思って。僕ご飯が食べられなくなってしまったんです。以前はぽっちゃりしてたんですよ。それで母にバカにされて、それからご飯が食べられなくなってしまいました」

「ああ。私もです。私も食べられない」

「一緒ですね」

「そうですね」

 美和子はスカート姿の自分の足を見た。女性らしいふくよかさは無い骨ばった足である。

 美和子の母はぽっちゃりとしている。母のようになりたくなかった。自分自身、それが何故かと考えると、母の性格は男好きで、だらしがなくて怒りっぽいのである。

「なかなか難しいですね」

「本当に」

 二人とも困った顔をする。それがなんだか可笑しくて笑ってしまった。

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