第3話

 診察室には十五分位いただろうか。簡単な診察が終わった後、美和子は医師にお礼を言い、診察室を出た。会計が出るまで再び待合室で待たなくてはいけない。

 どこに座ろうかと周りを見渡すと思っていたより男性の患者さんが多いのに驚かされる。

 美和子と同じ低体重の痩せている男性患者さんもいる。

(男性の方でもダイエットに失敗する人が患者さんいるのかな)

 美和子は他人事ながら心配をした。

 すると、じっと見つめすぎてしまったのかもしれない。その人がこっちを見た。思わず目があってしまう。

 綺麗な顔立ちをした人。美和子と同じ年か年下だろうか二十代後半位。少し肉がつけば女性にもてそうなタイプの男性である。

「ここ開いていますよ」

 隣の席を指さしてくれた。

「すみません。ありがとう御座います」

「今日は混んでいますね」

「私は初めて来たものですから、いつもはもっと空いているのですか?」

「ええ。でもだいたい二、三時間は待ちますよ」

 とりとめのない言葉を交わした後、男性は小説を読み始めた。美和子も次回は何か暇をつぶせる物を持ってこようと思った。

「晃、待たせたな」

「父さん、遅かったね」

「会議が長引いてな」

 男性の父親らしき人がやってきた。美和子は席を譲ろうと立ち上がりかけたが、父親らしき人はそれを手で制して

「大丈夫です。有難う御座います。」と言った。そのしぐさからこの父親らしき人物が少し威圧的なタイプの男性のように感じた。

 『摂食障害』この言葉が心に浮かんだ。美和子もこの部類であろう。ダイエットが原因で極端にやせ細るか、その反動で極端に太ってしまうか。この病気にかかる人間は親子の問題を抱えている人がなりやすいという。隣の男性もそうなのか?変に隣の会話が気になってしまう。

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