変わらないまま

翌週明け

僕は適当な理由を付けて斎藤さんをランチに誘った


僕 この前は楽しかったね

斎 はい、ありがとうございました

僕 また機会があったら呼んでよ

斎 勿論ですよ

僕 ところで、例の話題は真木さん明かさなかったね・・・

斎 それは言いづらいんじゃないですかね?

僕 そう言うものなのかな?

斎 ああいう場を暗くするような話題って出したくないんでしょ

僕 二人の時は話したりしたの?

斎 それは話しましたよ

僕 原因は旦那さんのコレ(小指)でしょ?


一般的な理由として考えられるのでカマをかけてみた


斎 何故ですか?

僕 単身赴任とかしてるとありそうな話しだから

斎 ですよねー・・・


ビンゴか?

ビンゴなのか?


斎 旦那さん、前にもあったらしいんですよ

斎 流石に真木さんも2度目は許せなかったみたいです

僕 そうなんだ

斎 あんなに綺麗な奥さんがいても男って浮気するんですね・・・

僕 人それぞれだよ、男でくくらないでよ

斎 ま、課長も独身になってから桃ちゃんにいきましたもんね

僕 行ってない!

斎 いやいや、あんなの見せつけて行ってないは通じないでしょ

僕 仲が良かったのは事実だけど、行ってはない

斎 津島さんも言ってましたから、そうなんでしょうけどね


知りたい事は分かったので目的遂行である

理由の真偽はどうでも良いけど、眞紀が離婚している事は間違いないようだ

理由については、もし眞紀に問題があったとしても正直に斎藤さんに話しているとは限らないので何とも言えないだろう

僕が言うのもおかしいかもしれないが、眞紀は聖人君子ではない

それは僕が一番知っているのだ・・・


こうなるともう逢いたくて仕方ない

寧ろ逢いに行かない理由が見当たらないのだ

妻には申し訳ないと思うが、以前のように泊まりの理由を考える事も必要ない


ならば、眞紀の都合を考慮してあげればいのではないか?

僕はすぐには行動に移らず、1週間程じっくり考えた

そして小細工はせずに、眞紀の都合に合わせて逢いに行くことに決めた


こういう連絡をするのに、ラインは本当に便利で都合が良い


僕:こんばんわ

僕:ご相談があるのですが、聞いてもらえますか?


20分程経過した


眞:こんばんわ、なんでしょうか?

僕:近いうちに大阪を観光したいのだが、ガイドさんをお願いできますか?

眞:いつですか?年内はいろいろ予定もあるので難しいです

僕:年明けでも大丈夫です、ガイドさんの都合に合わせます

眞:年明けたら日程調節します、それで良いですか?

僕:OKです、待ってます

眞:大阪は何処にいきたいのかしら?

僕:ガイドさんにお任せします

眞:日帰り?

僕:日帰りだと思うの?

眞:思わないよw

僕:新大阪駅付近の宿取ればいいかな?

眞:いいと思うよ

僕:探しておきます

眞:お願いします

僕:じゃあ日程取れたら連絡よろしく

眞:土日だよね?

僕:別に平日でも大丈夫

眞:お仕事は平気なの?

僕:後輩が優秀だから問題ない、勿論土日でも平気

僕:もっと言えば3泊くらいしてもいいかも

眞:それは私が無理だよ


調子に乗り過ぎたようだ・・・


僕:そうだよねw

僕:眞紀の都合にとにかく合わせるよ、僕はどうにでもできるから

眞:よろしくお願いします

眞:日程取れたら連絡するね

僕:よろしく

僕:おやすみ

眞:おやすみなさい


以前と変わらない

本当に楽しい

割とあっさりOKをくれるあたり、眞紀はやっぱり今自由な立場なのだろう

何があったのか気にならないと言えば嘘になるが、僕から尋問すべき事ではない


ただ、贅沢な不安が少しだけ過った


僕と眞紀は現在、良く解釈しても恋人同士であり、夫婦でもなければ婚約者でもない。ある意味気楽な関係なのだ

例えば、僕と眞紀が結婚したとしよう

当然一緒に住む事になり、四六時中一緒にいる事になる

それは、僕が望んだ状態であり、何の不満もないはずなのだが果たしてそうなのだろうか?


一緒に暮らせばゴミも出るだろう

そのゴミを互いに見せながら処理していかなくてはならない


僕は亡き妻と互いに好き合って結婚し、暮らしていた

冷えた夫婦ではなかったと思うが、互いに不満がなかったと言えば嘘になるだろう

そして20年近く暮らす中で愛が消える事はなかったが、その愛は家族愛に変わっていたのは否定できない

仮に眞紀と夫婦になれたとして、そうならない保証はない

それならば、いっその事永遠に恋人であった方が幸せなのではとさえ思える


僕は眞紀と大阪で逢う事になっただけで、不要な心配をしている自分がおかしくなり、そんな事を考えるのは止める事にした

宝くじは当たってから使い道を考えれば良いのだ

今の僕は、宝くじが当たる事で仕事を辞めてダメ人間になる事を心配しているようなものだと思うと、バカの極みである


もしこんな事を眞紀に話したら

眞紀は言ってくれるだろうか


「バカはバカ同士」と・・・



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る