第10章 15歳の夏休み
第83話 学期末
楽しいことの後には大変なことが待っているのが世の常です。
日本には、禍福は糾える縄の如し、という言葉もあるそうです。
修学旅行の後には期末テスト。
はじめからわかっていたことですので、私としては特に困らなかったのですが。
「ルゥー、赤点取っちゃったよー」
こういう者はいつも居るのです。隣の席でべそをかいているのはリンカ。それならきちんと勉強しておけばよいのに。
「いくつ取りましたカ?」
「みっつ。補修出なきゃだよー」
「自業自得ですネ」
「あー、ルゥがつめたいー。もっと優しくしてよー」
しません。普段よくしていただいていますけれど、それはそれこれはこれです。
ご覧の通りリンカは駄目だったようです。赤点みっつ以上は補修をうけないと単位をもらえないのが本校の決まりなのだそうです。普通にしておれば赤点など取りようがない気もしますけれど(本校の赤点は平均点の三分の一以下、と定められています)。
後で聞いたところによると、カナデも赤点ふたつで追加課題を頂いたそうです。
期末試験後の授業はのんびりとした雰囲気です。
「えー、静かに。期末テストが終わっても授業は終わってないぞー」
先生が檄を飛ばしますが、効果は薄いようです。
「わかってるのか! 返事は!」
「はあい」
と、おざなりな反応。
クラスのそこかしこでそわそわとした空気が落ち着きません。
こういっては何ですが、授業に集中しているのは私くらいのものです。
夏休みが間近だから、というのがその理由だそうです。
転入時に配布された年間スケジュールによると約四十日もの休日があるそうで、その間は登校不要(部活動、補修などの用がある場合は除く)だそうです。
四十日ものお休み!
そんな大量の休日は人生初体験です。想像もつきません。
それなりの量の宿題も出るそうですが、一体何をして過ごせばよいのでしょうか。
浩一郎さんはお仕事でそれほど休みはなさそうですし。
休み時間にリンカから嬉しい伝言をいただきました。
「あ、そうだ。お姉がまた家かショップか遊びに来てね、って言ってたよ」
「わかりましタ」
「予定合わせて遊ぼうねー」
「リンカは補修頑張ってからですネ」
「うぬぬ、ルゥのいけず」
遊ぶ、ですか。
それもいいですね。
いいのですが。
進路についても、浩一郎さんを納得させられるだけのものを考えないとなりませんし、四十日もあるとはいえ、忙しくなりそうです。
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