第27話 スマホ
お友達の森木林果さんからの「スマホ買ってもらってSNSやろーよー」という懇願を受けて、スマホなるものを買いにいくことになりました。
道中、浩一郎さんからも「緊急連絡時の手段としてあった方がいい」というお話もあり、それならば、というところで、スマホ屋さん? に向っているところなのですが――
「あら? 水元くんじゃない?」
「日下部さん。こんちは」
――クサカベさんという女性にばったり出くわしたのでした。
はじめて見る女性です。浩一郎さんのお知り合いのようです。
浩一郎さんはデレデレしています。
胸がちくりとしました。
なんでしょう。ムカムカもしてきています。
そもそもこのクサカベさんという方、両肩を出した衣服でエッチな感じです!
心なしか浩一郎さんの目線もクサカベさんの胸元に集中しているような。
私が自分の胸元に視線を落とすと、靴の甲がばっちり見えました。ぬぬ。
「こんにちは。休日に会うなんて珍しいよね」
「そっすね」
そんな挨拶のような会話をしている間中、私はずっと浩一郎さんの手を握り、腕にしがみついて、もとい、腕を絡めていました。
この女性は敵です。間違いないです。
「ところでその子は? 親戚の子かしら?」
年下だと思って完全にお子様扱いとは!
これは、ここではっきりさせておく必要ありと判断します。
「私は、浩一郎さんの、許嫁デス!!」
「え? 許嫁?」
「そうデス!」
それ以外に一体何かあるというのでしょうか。
「あ、えーと」
説明をしようとする浩一郎さんの機先を制して、クサカベさんは小さな鞄から、てのひらサイズの四角い平らな板――後で知ったのですがこれがスマホだそうです――を素早く取り出し、こう言ったのでした。
「水元くん、通報してオーケー?」
「ダメです!」
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