第19話 対面
いつの間にやら眠りこけてしまっていましたけれど、浩一郎さんらしき方がお帰りになった時に、目を覚ますことができてよかったです。
「
「そうですけど……」
浩一郎さんのお顔は、かなりお疲れ、少し怪訝、残りは警戒感に満ちていました。けれど、どこか優し気な雰囲気はオジサマによく似ていらして、私は安堵しました。
浩一郎さんと私との身長差はかなりのもので、ものすごく首を上に向けていないとお顔を見ていられませんでした。
そのままの体勢で、自己紹介をします。
「私は、ルゥ、と申しマス」
「ルゥ」
名を呼ばれるだけで嬉しい、ということが御父様、御母様以外にもあるのですね。
顔が自然と綻びました。
「オジサマ――浩一郎さんの御父様から、手紙を預かってきてマス」
これで大丈夫、のはずです。
オジサマはそう仰ってましたし。
ですが、浩一郎さんは手紙を受け取ることもなく、不信感を露わにされました。
不穏な空気が私たちの間に停滞しました。
事ここに至っては、オジサマのお手紙に頼るばかりではいけません。
ここには私しかいないのです。
ですから、即座に私は、声高らかに宣言しました。
「私は、浩一郎さんの、許嫁デス。不束者ですが、宜しく願い致しマス」
勢いよく頭を下げ、ゆっくりと顔をあげると、ものすごい顔をして虚空に右手を振り上げている浩一郎さんの姿がありました。何かの儀式でしょうか。
そして、
「とりあえず、中で話、しようか」
困ったような笑い顔を浮かべて仰ってくださいました。
その笑顔を見て、悪い人ではなさそうだな、と失礼ながら思う私でした。
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