第4話 湯舟
買ってきていたコンビニ弁当を二人で分け合って食べた。
ちょっと量が物足りないのでは、と思ったけど、ルゥさんは始終ニコニコしていたのでまあちょうどいい量だったのだろう。きっと。
俺はビールでも飲みたかったが自重した。今日はやめとこう。うん。
いつもはシャワーで済ます派の俺だが、おそらく長旅の疲れもあるであろうルゥさんにはゆっくり風呂に入ってもらいたい。
ので、湯舟に湯を張った。
「ルゥさん、先に風呂入って」
「浩一郎さんも一緒に入りマスカ?」
うぉい!?
「若い子がそういう冗談言うんじゃないの!」
「本気なのデスケド」
「それはもっと困る!」
狭いから二人同時は無理、と言いくるめて、タオルと着替え(俺の。無論洗濯済みの)を風呂場へ行かせた。
二分後。
風呂場から、きゃー、みたいな悲鳴が聞こえた。
なんかあったかな。
「ルゥさん、大丈夫? ドア、開けても平気?」
「ア、ハイ」
泣きそうな声。
そろりと風呂場の戸を開けるとタオル一枚のルゥさんが涙目でこっちを見ていた。
華奢な後ろ姿が見えるが見ない。見てはいけない。
「何かあった?」
「お湯が、こんなに一杯、沸かされてあるのに、ビックリしまシタ……」
おぅ。
文化圏が違い過ぎる。
どこから来たんだこの子。
わからんけど、水汲みと湯沸かしの苦労を思いびっくりしたんだろうな。わからんけど。
「気にしなくていいから。湯舟にどぼーんと入ってあったまっちゃってよ」
「ア、ハイ」
素直に頷いたあと、ソウソウ、と彼女は続けて、
「背中とはいえ肌を見られたからには、やはり娶ってもらう他ありまセンね」
にっこり笑ってそんなことを言ったのだった。
娶る。
娶るのか、俺。今のところ保護者気分なんだが……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます