第2話 手紙
玄関前でする話じゃあないので、とりあえず家の中にルゥさんを招き入れた。
招き入れた、って時点で脳裏を事案・通報といった単語がよぎる。怖い。
手狭な1DKに通し、座布団を勧めると彼女は「失礼しマス」と正座した。
背筋をピンと伸ばし座る彼女の姿は美の極致に近い。
見たことも無いようなきれいな銀髪に、褐色の肌。
何色とも形容しがたい不思議な瞳の色。
くっきりとした目鼻立ちは将来の美貌を確約している。
何処の国の人なのか検討もつかないが。
この子が俺の許嫁、だと?
目の前でずっとニコニコしているローティーンの美少女に多少気圧されながらも、俺は改めて挨拶をした。
「はじめまして、水元浩一郎です」
すると、何故かルゥさんの表情が一瞬曇った。気がした。気のせいかもしれんが。
まあいい。話を進めないことには何もわからない。
「ええと、親父から預かってるっていう手紙、見せてもらっていいかな」
「ハイ!」
すぐに笑顔に戻り、ルゥさんは俺に手紙を両手で差し出した。
手紙の内容はこうだ。
オッス! オラ親父。元気にしてっか?
浩一郎も知ってるオラの親友のウォンが死んじまってどえれえ大変だったぞ。
ひとり娘のルゥちゃんが天涯孤独の身の上になっちまってなあ、ウォンさんの遺言と例の約束もあるし、いっちょやってみっかってことで後見人になっちまった。
役所関係の手配はバッチリやってあっから、四月からルゥちゃんは中学に通わせてやってくれよな! ちなみにお前と同中だぞ。よかったな!
それと、十五年前の約束の通り、ルゥちゃんと浩一郎と結婚させっから、それまで大事にしてやらねぇとオラ許さねえからな!
どんなにワクワクしても手ぇ出すのは結婚してからだかんな。オラとの約束だぞ!
追伸 お金は時々振り込みます。ルゥちゃんのために使ってください。
なんで某戦闘民族口調で手紙書くんだよ。馬鹿なのか。中身の異様な濃さと釣り合ってねえんだよ。つうか、ウォンおじさん亡くなったってマジかよ。そーゆーことは手紙じゃなくて電話して来いよ! 命の恩人なんだぞあの人は! バカ親父め!
そんで、
「十五年前の約束ってなんぞ!?」
俺は知らん。聞いたこともない。
だが、
「浩一郎さんと私、結婚の約束をしておりマス。誓いのキスも済ませてありマス」
ルゥさんが褐色の頬をぽっと染めた。
済ませてんの!? 俺、これっぽっちも記憶にないですけど!?
ルゥさんは可愛いし、将来、掛値無しの美人になることだろう。それは間違いない。でもマジで俺、この子と結婚すんの? 歳の差幾つになるんだ?
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