エピローグ

 俺は彼女がいた空間を眺めた。


 溶けるように消えてしまった彼女が先程までいた場所を。


 俺は空を抱いて、泣いた。


 分かっている。

 悲しいことは何もない。

 彼女は救われたのだから。

 呪いが解けて、やっと解放されて……自由になれたのだから。


 だから、悲しいことは何もない……。



 そう、自分に言い聞かせながら、



 俺は彼女がいた後を、

 何もない空間を、

 静かに抱き締めた。



 俺は暫くそうしたあと、彼女に刺さっていた呪いの剣を手に取った。


 すると、剣から温かい力が伝わってくるような、不思議な感覚に襲われた。



 まるで、彼女が力を与えてくれているような──……。



 俺は立ち上がった。 


 次の冒険へ行くために。


 彼女の想いを無駄にしないために。








 ──こうして勇者はまた新たな冒険へと旅立った。




             終

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とけゆく想い 渡辺翔香 @ayaka-watai

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