運命 ③
そんな過ごし方をしているうちに、「さくらと水希はできている」なんて噂が流れるようになってきた。
「ねぇ!さくらさ!!水希の事好きなの!?」
「え……うーん……」
「教えてよ!!」
転校してから唯一仲良くしてくれているカナちゃんに、グイグイ聞かれる。
カナちゃんはめっちゃ美人で、確かこの年齢なのに彼氏がいて、スタイルもいい。
そして……女子に僻まれて嫌われている。
全ての始まりは、カナちゃんに水希の事を話してしまった事だったと思う。
この先数年間苦しむことも考えずに、安易な気持ちで彼女に話した。
翌日の事だった。
「……さくらってさ、風谷くんのことが好きなの?」
「え!?!?ぜんっぜん!!!」
「ほんと?最初ずっと風谷くんのこと見てたじゃん、
「いや……綺麗な顔してるなって思ってただけだよ。好きなんかじゃない。タイプじゃないもん」
焦りながらそう話すと、水希はニコッと笑った。
「なんだ、良かった」
「良かった?」
「……俺、さくらのこと、好きだから」
「……へ?」
「じゃあ、また明日!!!」
「ちょっ、待って!!!」
人生初の告白は、想定外だった。
そんな自然に、サラッと言われるものなのか。
チェック柄のパーカーをなびかせて走る水希と、強い波の音が記憶に焼き付く。
呆然としたまま教室に帰れば、出迎えてくるのはカナちゃんだった。
「ねぇ!!どうだった!?」
「どうだったって何が……?」
「水希!!!」
「え?」
「昨日さ〜言ったんだよ、両思いだよって!」
「ちょっ……え!?」
「告られたでしょ?」
告られた。
好きだから、って言われた。
「……ちょっと頭冷やす」
そうとだけ言って、席に着いた。
つまんなさそうな顔してるカナちゃんと、頭を抱える私。
好きだからってそもそも何?
私も好きですって言えばいいの?
付き合いたいとかじゃないの?
好きです好きです、で終わり?
付き合ってくださいじゃないの?
それって告白なの?
そもそも友人として好きとかじゃ…………
帰りの会、さようならの声と共に教室から飛び出した。後ろで先生が走るなって言ってた気がするけど、そんなのも関係なかった。
だんだん頬が赤くなっていく気がするのは、多分走ってるせいだ。
窓の外を見ると、校庭に1人立つ水希がいた。
ただ、帰らないでと思いながら走る。
昇降口を走り抜けた先、待っていたのは笑顔だった。
「一緒に帰ろう」
「っはぁ……はぁ……」
「どうしたの?」
「水希が帰っちゃうかと思って、急いで来た」
「えー!俺ここで待ち伏せしてたのに!」
「なんだぁ……」
校門を出て二つに分かれる道、私と水希は同じ方向。
「あ、あの、私も……好き、だから……付き合う……?」
「あっ、嬉しい。じゃあ……」
「え、彼氏彼女ってこと?」
「そうだね」
急に照れくさくなって、黙り込んでしまう。
後ろに足音が聞こえる。
なにか上手く話さなければ、話さなければ……
「あっ、あーーーの!暗殺教室!!見たよ!!面白かっ……」
「声でっか。静かにしろよ」
「あっ……」
後ろの足音の正体は風谷くんだった。
「風谷くん、ばいばぁい」
「……」
水希の挨拶にも応じない風谷くん。
「やっぱクールだねぇ」
「そうだね……怖くて苦手だな」
「見た目はカッコイイけどね」
風谷くんのおかげで、少しだけ緊張が解けた私たちは、手を繋ぐこともハグすることもない、純粋な恋愛を始めた。
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