最終集 運命の人
運命 ~プロローグ~
運命の人なんていないと思っていた。
いないなんて思いながらも、神様の前で祈るのは「運命の人を教えてください」だった。
煌びやかなウェディングドレス、美しい式場に、木村カエラのButterfly。
幼稚園の頃、テレビで見た結婚式の映像が、『結婚』『運命の人』というものを私の脳に強く焼き付けた。
小学校の頃、噂を聞いた。
洗面器に水を張って、自分の血を垂らすと、運命の人の顔が出てくるって。
そんなくだらない噂を真に受けても、運命の人の為に血を垂らす勇気はなかった。
水を張った洗面器に反射する私が、私を見ていた。ただ、それだけだった。
あわせ鏡の13枚目、そこに移る顔は自分の死に顔。でも、14枚目まで覗くと、運命の人が見える。
そんなくだらない噂も聞いた。
閑散としたジョナサンのトイレであわせ鏡をして、13枚目と14枚目を覗こうとした。
見えるのは、10枚目までだった。
切なく広がった鏡と、そこに映る無数の私。
私が、私を見ていた。
そうやって生きていれば、段々と「運命の人は自分で見つけるもの」だなんて思っていく。
好きになった男子を「この人こそ運命の人だ」と自分に言い聞かせては、小学生らしく儚く消滅していく。
すぐ咲いて、すぐ枯れる。そんな恋の花だった。
例え両思いになっても、先に進むことはなかった。だって、小学生だもの。
あの日、水面に反射した私は、運命の人について何も教えてくれなかった。
手探りで探すしかなかった。
これは、そんな小さな私が、大きくなるまでの、本当のお話。
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