現実のはなし


彼女セカイを世界に広めようと思った理由はなんですか?」


朝番組のインタビュー。

敏腕マネージャーの仕事術、価値観。

そんな感じのテーマ。

上手く作れるようになった笑顔で、を語る。



ごめん剣崎、私クッソつまらない人間になっちゃった。



セカイに憧れた理由とか、セカイを広めた理由とか、そんなの聞かれても、答えられない。

きっと、その質問の中身には、を求められている。

誰も私の本当の話には興味が無いの。



私がセカイに惹き込まれた理由は、中学校の頃の友人剣崎だった。

剣崎は、私が彼女のことを、あの日――髪を貶した日に知ったんだと思ってるだろう。

でも違う、私は中学一年生の頃から剣崎を知っていた。


明るめな茶髪の地毛と、砕けた口調は、どう見ても不良そのものだった。

最初は、嫌な奴だと思ってた。

でも、私が廊下で筆箱を落として、ペンを散らばした日。


「大丈夫?」


立ち尽くす私とは反対に、全て拾い上げて、「筆箱可愛いね。似合ってる。じゃあね!」

そう言って、笑顔で去っていく彼女に、心が揺れた。

伯父からもらった、可愛すぎる筆箱は私らしくない。特にDreamと書かれてる部分が気に食わなかった。私は現実に生きてるから。

でも、似合ってると褒められた……ただそれだけで、私は少しだけ剣崎に興味を持ってしまったの。


結局、中学三年生の年はずっと一緒に過ごして、高校進学で離れ離れになって、ずっと話してない。

連絡先も知らない。



だから、この今受けてるインタビューを剣崎が見たら、気づいて貰えるように……。


「最後に何かありますか?」


「そうですね。私がここまで頑張る原動力をくれたのは、中学三年の時の友人のおかげでした。今も大好きです。」


そう話した。

カットされた。






セカイに興味を持ったのは、本当に剣崎のせいなんだ。

剣崎星華唯……強すぎる名前と、セカイという名前。

同じ名前の亡きアイドルを重ねてみて、沼っていっただけだった。


「黒宮さん、次の仕事は?」


「……私について来ればいいわよ」


「うん」


結局今も、セカイを剣崎に重ねてるだけなんだ。ずっと大好きだから。

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