今世でも愛する ②
「……メロンソーダと、オムライスです」
イラつきが前面に出た声。
「……すみません」
ついつい謝ってしまう。
「今日は、残さないで頂けるとありがたいです。」
そうとだけ言い残して、キッチンに戻ってく店員。
金髪なのに無駄に厳しいのはなんなのか……って、この思考、けっこー古くない?
俺、実質17歳プラス25歳だし……。
そう、俺は25歳で死んだ。
俺が22歳の時に亡くなったセカイを追って、だ。
すぐ生まれ変わって、その年のうちに生まれた。
元嫁は生きてるのだろうか。
今日も娘はこの『カフェ おむらいちゅ』で働いてるが、嫁の姿はもちろん見たことがない。
……嫁との出会いは、今考えれば最悪だったと思う。
「―――お見合い?」
当時の俺は、家族にそんな古めかしい相談を持ちかけられて、セカイへの想いを断ち切れるなら――なんて、結婚してしまった。
父の家業を継いで、早くに生まれた子供を愛する。
そういう人生を、送るつもりだった。
「……」
あの大雨の日、駅前でセカイを見るまでは。
「はぁぁぁあ……」
また深いため息が出てしまい、ちらっと見ると店員が睨んでくる。
「う、ウミちゃん、あんま睨まないの……」
娘に助けてもらう情けなさ……。
仕方なく、メロンソーダを1口飲んだ瞬間だった。
カランカラン、と店の扉が開き、青髪の少女が入ってくる。
「お好きな席どうぞ」
彼女は、俺の隣の席に座ってくる。
「アイスの乗ったメロンソーダください」
微笑む顔は、まるでセカイだ。
じっと見ていると、彼女はそれに気づき、微笑み返してくれる。
「お兄さんもメロンソーダ好きなんですか?」
「あっ…いやっ……ずっと探してる人が、メロンソーダだいすきで……」
「へぇ〜、わたしと一緒だあ」
「……」
妙に緊張して、黙り込んでいると、彼女は荷物を持って立ち上がって、「ここ座ってもいい?」なんて、俺の対面の席を指した。
頷くと満面の笑みで返してくれる。
「お兄さんはなんでこの店に来たの?」
「お、俺は、、さ、さっき言った探してる人が、ここに来る気がして……」
なんの意味もなくこの店に通ってるのだが、口から出てきた言い訳はそんなくだらない言い訳だった。
「そうなんだぁ、その探してる人ってさ、どんな人なの?」
俯いて、手を組む。
「…あ、青髪で……世界でいちばんかわいい……ひと。大切な人……」
チラッと彼女を見ると、笑っていた。
「青髪だったら〜、あたしかもしんないね!」
「……っ」
……多分、この人がセカイの生まれ変わりなんだ。
「私、君気に入った!友達になって!」
青髪の、セカイのような女の子に、
こんなふうに話しかけられるなんて………
やっぱり、俺とセカイは神に約束されている。そう確信せざるを得ない。
「……おまたせしました、メロンソーダです」
金髪の店員が置いたメロンソーダは、アイスが熔けて、ぐちゃぐちゃになっていた。
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