同性、同姓 ②
「あっ、この子はねっ」
突然立ち上がって、男の子の肩を軽く叩く鈴木さん。
「友達の、弟なんだ」
――友達。
男の子は、いっそう、険しい顔つきになる。
――これ、やっぱり修羅場なんじゃ。
「あっそうだ!」
鈴木さんは何かを思いついたような顔をして、カバンをゴソゴソと探し出したと思えば、
また、『ハッ!』と言わんばかりの顔をして
さらにゴソゴソと激しく、探し始める。
まるで小動物を見ているような気分になる。
「あったあった……」
そういって、鈴木さんが取り出したのは、
私の大好きなお菓子のシリーズの新商品だった。
「これね、鈴木さんにあげようと思って、買ったんだあ!」
そう言うと、私の手を強引に掴んでくる。
「えっ、ちょっ……」
恋愛対象に、ましてや好きな人に……。
「どーぞ!」
手は掴んだまま、手のひらにポンっと、載せてくる。
「あ……あり、がとう…」
めちゃくちゃ恥ずかしい。
今すぐにでも手を離して欲しい。
好きな人に手を掴まれる気持ちって、こんな………。
「じゃ、私帰るね! 鈴木さん、しょーちゃん、またねー!!!」
彼女は怒涛のように去っていく。
怒涛のように……って言うか、私が勝手に首を突っ込んだだけだが。
先程まで触られていた手首と、手のひらを見つめてしまう。
柔らかくて……小さい手。
「僕たち、仲間ですね。」
その声にハッと我に帰る。
振り返ると、例の男の子が悲しそうに笑っていた。
「仲間……?」
「はい。仲間です。」
「どこが??」
怪訝な顔をしてる自覚はあるが、何を言ってるのか全く理解ができない。
「僕も、あなたも、はなちゃんの事が好きですよね。」
ズン、っと刃物で心臓を刺されたような感覚が全身を走る。
「そんなこと…………」
「ありますよね」
儚く笑う男の子。
「……そうだって言ったら、鈴木さんに言うの?」
「言いませんよ」
ははっと笑われる。
――鈴木さんって、はなっていうのか……。
そんなことも知らない私は、どこかこの子に負けてる気がした。
「たとえ、どんなに大人だろうと、どんな性別だろうと、僕はライバルには容赦しませんよ」
そういった男の子の目は本気だった。
私の気持ちよりも、男の子の方が――。
「さようなら。」
遠ざかっていく男の子をみて、切なくなった。
私は……本当に鈴木さんが好きなのか、わからなくなってしまった。
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