陽射 ②
誓ったはずだった。
確かに、心に誓ったはずだったんだ。
それなのに。
「お前の全部が嫌いだよ」
あれ程明るかった彼女は、まるで別人のようになってしまった。
そう、俺のせいで。
彼女にとって、俺は、歴代4人目の彼氏だった。
俺にとって、彼女は、歴代1人目の彼女。
好きという感情すらよくわかってなかった俺には、初恋そのものだった。
だから、意地悪したくなる小学生みたいに、散々自己中で振り回しては、その自己中にも呆れずに付き合い続けてくれる事に安心感を感じて、また安心感を求め彼女を傷つけ、それでも離れない事に安心して、また――。
俺は何度も彼女を執拗に傷付けた。
人格否定や過去を否定したり、散々傷つけた。散々泣かせた。
太陽のように明るくて、眩しかった彼女を
まるでゲリラ豪雨の如く、変えてしまった。
彼氏から傷付けられる、と言う事を知った彼女は、心をそっと閉ざしたようにも思えた。
そうして、俺は別れを告げられた。
なんで俺の自己中を受け入れてくれなくなったんだよ、なんて筋違いの極みのような怒りが湧いてきた俺は、じゃあいいよと意地を張って、別れた。
それからずっと、毎日、彼女の事が頭から離れなかった。
何度も後悔した。何度も会いたいと思った。
LINEも送った。返信はなかった。タイムラインの投稿も消されていたから、ブロックされたんだと悟った。
そんな俺は、彼女に会うために、毎日近所のレンタルビデオ屋に通い詰めていた。
彼女も、必ずここで利用すると思ったからだ。
それから1ヶ月経って、初めて彼女が現れた。
ゲリラ豪雨の日だった。
激しく地面を叩きつける雨音がうるさすぎて、彼女が発した言葉を聞きとることができないほどでもあった。
彼女の顔を、改めて見ると、本当に太陽に雲がかかったような――暗く、なっていた。
直後、彼女の視線で俺は理解した。
俺は憎まれていて、嫌われていて、あしらわれていると。
それでも、記憶が飛んでしまうほど、
ドキドキがやまなかった。
俺は散々アタックした。
家に来ないかとか、うん。
ただ、鮮明に覚えているのは、
迷惑そうな顔で、
「お前の全部が嫌いだよ」。
そう、その言葉だけ。
それでも俺はめげずに、
帰り道、彼女の後ろを着いていく。
彼女は気づいているのか。いないのか。
わからないけれども、ただ無言でついて行く。
ふと、肩を叩かれ、振り返る。
後ろに立っていたのは、彼女の親友―砂原。
「なんでお前がここにいるんだよ」
ゾッとして、大声で喋ってしまう。
「うるせぇな…」
砂原はそう言いながら、舌打ちをして、
「お前こそ、ストーカーで訴えるぞ」
ニッコリ、笑った。
「ストーカー…?俺が?」
「元カノの行きそうなとこで待機、しつこく迫った挙句、後つけるって…ストーカー以外の何物でもないだろ?」
「そんなわけ…!」
「学校、通報しよっか?」
その言葉でサーッ、と血の気が引く。
ついこの間、先輩が迷惑行為で停学になったばかりだった。
「…悪かったよ」
そう小さく呟いて、俺は、彼女の後を追うのを辞めた。
俺は、彼女が今でも好きだ。
これからも、彼女の事を追い続けると思う。
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